君の雪は解けない


「⋯⋯お前、人殺したこと、あるだろ⋯⋯っ!?」

切羽詰まったような声で、何をそんなに焦っているのか。
自分がもしかしたら殺される、と思っているが故のその震えた声なのか。

眞雪は男から飛び退いて、今度は男の正面に回る。

そして、ぐ、と男の顔を掴む手に力を入れて、


「喋りすぎ、だよ」


眞雪は敬語も忘れてその顔面を、
思いっきりコンクリートの地面に叩きつける。

男は、カエルが潰れたような妙な音を出したのち、ぴくりとも動かなくなった。

かろうじて呼吸していることを確認して、すぐさま携帯を取り出す。


ぷるるる、ぷるるる、とスマホは音を立てる。

発信先はもちろん、有瀬だ。


「余裕だったよ」