君の雪は解けない

よほど揶揄われたことが嫌だったのか、伊吹の顔はもはや般若と化している。

眞雪はこの光景は初めてだったようだけれど、
萌依含む白蓮は日常茶飯事のことなので、にこにこと微笑み見つめていた。

———と、そこに、がちゃりと聞きなれた音が耳に入る。


「⋯⋯⋯ええ、と」


今の今まで席を外していた男。

困惑したような面差しの有瀬が、そこには立っていた。

途端に空気は静まり返り、
うんともすんとも言えぬ雰囲気になる。


「こ、れは」


簾を羽交い絞めにしたままの伊吹と、
そこから必死に抜け出そうとした態勢の簾。

彼は何事かと二人を交互に見つめ⋯⋯結局理解はできなかったようで、首を傾げた。

血の気が失せると同時に、
萌依は有瀬をまじまじと見つめた。

(眞雪くんとは、また違った類の)