君の雪は解けない


「何を心配しているのか分からないけど、僕男だよ?」

「で、でも⋯眞雪さん、すごく綺麗な方だから、もしかしたらって、」


緊張した様子で、何度もひっくり返る彼女の声。

それは、話している此方が悪い気になってきてしまうようなもので。


「本人に聞いてみたら。二ノ宮、桜井一筋だと思うよ」

「なっ、ひ、ひひひ一筋⋯⋯⋯」

「そんなに照れること?」


一人で顔を真っ赤にさせる彼女は、きっと純粋以外の何物でもないのだろう。

(こっちは桜井との惚気(のろけ)を散々聞かされているのに、⋯⋯随分(ずいぶん)と初々しいな)


そうだ、二ノ宮は香賀が居ないときを見計らってか、
いつも締まりのない顔でのろけてくる。

けれど、本人がこの様子ということは彼女には伝えていないのだろう。

(⋯⋯痴話喧嘩に付き合わされるのは、面倒だなあ)