君の雪は解けない

上下関係は目にも明らかで。

今にも壊れそうにぐらぐらと揺らいでいた家族だけど、
それでもなんとか形としては成っていた。

つなぎ役を担っていたのが、僕だよ。

実の父親からは性欲と嗜虐癖の捌け口にされ、
実の母からは、お金のためにと売春やらなんでもやらされた。

あはは、今思うと、まさに虐待だね。

けれど当時は本当に、気づかなかったんだ。
自分は幸せだとすら思っていたね。

⋯⋯でも、やはり心のどこかで、鬱憤が溜まっていたのかも。

だって僕は、10歳のとき⋯
———ううん。ごめん。なんでもない。


ある日両親はいきなり死んじゃって、
僕は父の兄が会長を務める黎月会に引き取られたんだ。

それで初めて琉佳と会ったわけだけど、当時はまさに天使としか形容しがたかったね。

⋯今?どうだろう。黙っていれば天使かもね。

ああ、そういえば、さっき紹介した有瀬と出会ったのもこのときだね。
所謂幼なじみというやつなのだと思う。