君の雪は解けない

本当かよ、とでも言いたげな有瀬の視線を受け流し、眞雪は彼女を横目で見る。

さっきほどではないにしても、恥じらう様子が見て取れる。
きっと大方眞雪の発した『有瀬の大切な人』というワードにでも反応したんだろう。

有瀬は観念した様子で「じゃあ3分ね」と言う。


「それだけあれば、余裕」


彼女と共に席を立ちながら、眞雪は考えを巡らせた。

いつから有瀬は、これほど狭量な男になっていたのだろうか。
今の彼は、若も好き、モモも好き、というどっちつかずの中途半端な男に見えなくもない。

もちろん若のボディガードである身としては、
主から離れるなど許せないし、大前提として主が許さない。

そして、今も変わらず主には毎夜のごとく抱かれていると言う。

若への気持ちが冷めたわけではないだろう。
けれど、彼女が居るとき、僅かに表情が明るく見えるのも気のせいではないはずだ。

(⋯⋯本当、男の子って分からない)

長く居ても心の内など読めないな、と眞雪は自虐的に天を仰いだ。