君の雪は解けない

躊躇いに躊躇った末、逃げられないと判断したらしい。

ぷしゅ、と彼女から蒸気があがり、恥じらうように手で覆った。


「へえ」

「⋯⋯⋯⋯」


特徴は当たり障りがないし、有瀬とも限らない。

⋯けれど。
(さっきから有瀬の反応を横目で見てるの、ばればれだよ)

これが恋する乙女、といったところだろうか。

その姿はなんともいじらしく、
有瀬の手中に収められているようで哀れでもあった。


「モモちゃん。ちょっと、二人でお話良いかな?」


ね、有瀬。と彼の亜麻色の双眸を見つめる。


「⋯⋯変なこと、しないでよ」

「もちろんだよ。有瀬の大切な人にそんなことするわけない」