君の雪は解けない

眞雪は食い気味かつ有無を言わさぬ微笑を湛えると、
彼女と束の間かちりと視線を交わらせ、長い睫毛を伏せた。

形の良い唇が、先程よりもゆっくりと何かを紡ごうとしている。


「——じゃあ、好きな男のタイプは?」


決して他意がないことは、誓おう。

眞雪は、ここで有瀬の特徴が出てくるかに興味を持っているだけだ。


「え、その⋯すっ、すきな」


しかし、彼女は頬を林檎みたく赤く染め、狼狽するばかりで、
肝心の眞雪が求める回答は得られない。

それもずっとそんな調子だから、感情の起伏があまりない眞雪でさえも
腹の底が沸騰するような感情が沸き上がってくる。

何聞いてるの、と言わんばかりの有瀬の視線を感じるも、今そんなことは知ったことではない。


「⋯⋯やさしい、方、です」