君の雪は解けない

彼女はあがり症なのか、ひっきりなしに視線を彷徨わせ、白い両頬を薄紅色に染めている。

どうやら彼女は湿っぽい性格らしい。
眞雪は心の内の毒を微塵も見せない様子で、人好きのする笑みを浮かべた。


「じゃあ、まず有瀬との出会いを教えて?」

「え、えっと⋯たしか」

「モモ。そんなこと言わなくていい」


懸命に言語化しようとする彼女の口をぽんと防いだ有瀬。

眞雪が口を尖らせるのもものともせず、彼女の方に微笑み続けている。


「じゃあ、好きな食べ物は?」


いきなり深いところに切り込むのは駄目だと学んだため、
当たり障りのないどうでもいいことを聞く。

彼女は僅かに逡巡したのち、首を傾げた。


「ぶ、ぶどう⋯⋯?」

「分かった、今度送ってあげるね」

「や、でも、そんなの」

「申し訳なくないよ。有瀬がお世話になってるんだから」