追加情報として覚えているのは、桃野という人間のみ女性ということだけ。
「どうしてそんなに、僕を入れたいの?」
「どうしてって⋯⋯決まってるだろ」
自信満々な様子の伊吹に、眞雪はどんなものかと耳を立てる。
——が。
「強そうだから」
「はい?」
眞雪が聞こえないとでも思ったのか、
もう一度「強そうだからだよ」とさも当たり前かの様に言うトップに、眞雪は拍子抜けしてしまった。
(⋯⋯強そう、だから?そんな適当な)
「そう、じゃあまたね」
いきなり興冷めしてしまったが、
そんなことはおくびにも出さないように気を付けながら、眞雪は教室を出た。
後ろから「それはないだろ、」とトップに対する情けない声が聞こえたが無視する。
(⋯⋯本当に、若。どうして僕に学校に行けと仰ったのですか)
今ここにはいない、自分の主人に問いかける。
当然返事が返ってくることはなく、眞雪はふうと息を吐いて空を仰いだのだった。

