世良鸛太(せらかんた)。4月3日生まれ、中学3年生男の子。もともと母子家庭で、小学6年生の時に新しい父を迎えた。彼は昔から優しくて、賢くて、けれども年相応に__ボトルフリップにハマるほどに__子供らしい。皆からは「コウノトリ」の愛称で親しまれていて(私は少しそのあだ名はどうかと思っているが彼はかなり気に入っている)、その名の通り、彼の周りはいつも幸せに満ちている。新しい父とも、彼はすぐに打ち解けた。
私と鸛太くんは、五歳の時から一緒だ。当時の私は、男の子が近所に引っ越してくると聞いたその足で、自分の家の隣に立った新しい家を見に行った。中から誰かの声がして、もしかしたら噂の子がいるかもしれないと思った。それで、遊ぼう!と叫んだ(その日出てきたのは引越し業者のお兄ちゃんだった)。それから毎日見に行って叫んだ。毎日毎日やるものだから、流石に母から「引っ越しの挨拶が来てからしなさい。」となだめられた。
だから、だからあの日、これで最後にしようとした。
いつもと同じだな。帰ろう。そう思って後ろを見た瞬間、カチっと窓の鍵が開く音がして____。
視線を向けたその先に、可愛らしい男の子が顔を出した。そして、にっこり笑って、こう言った。
「うん、遊ぼう!」
それが幼き日の鸛太くんである。
もちろんその日は二人とも無断で家を出ていたのですごく怒られたのだが、幸い私達が遊ぶことを禁じられることはなかった。
私達は毎日遊んだ。飽きることなんて無かった。鸛太くんのお母さんがたくさん宿題を出した日も、私がお父さんにお手伝いをたくさん頼まれた日も、私達はすぐに終わらせて、一緒に遊んだ。
一度だけ、妹たちが同時に熱を出して遊べない日があった。看病でくたくたになったころ、外から
「お手紙読んでね!」
という声が聞こえた。
私が外に出ると、ドアの飾りに手紙がさしてあった。
それは、私と今日話せなかったぶんの、たくさんの楽しかったこと、悲しかったこと、そして、私への応援が書かれた手紙だった。何度も書き直したあとがあって、少し黒くて読みづらかったけど、すごく嬉しかった。その日、5月14日を、一番悲しい誕生日から、私が恋をした日へと塗り替えられた瞬間だった。
その日からずっと、私は彼に恋をしている。今この瞬間だって、ペットボトルで遊ぶ鸛太くんと目が合わないかと試みて____
「レナちゃん!」