否定も肯定もしない静かな声が私の胸に淡いランプの灯りをともした。
彼がだんだんとギターを弾くスピードを上げていく。私はチェアーからスレッドに切り替える。右足を痛めているから足の入れ替えは上手くいかない。そこから一点倒立を目指す。頭で全体重を支える。が、未熟な頭と首の筋肉と骨がそれを許さない。倒れる。身体を手で支える。痛みと負荷をぎしり、と感じる。人間は太古の昔から飛べないようにできていた。
それでも宙を舞うひとがいる。舞おうとするひとがいる。重力に逆らって。それがダンス。
彼が弾くフラメンコ。早弾きのトレモロ。髪が揺れるたびに見える紫。光る窓。見知らぬ国の情熱を運んで私に命じる。「踊れ」と。自由に、自由に、もっと自由に踊れ、と。
もっと楽な道があったはずだった。両親の言うことを聞いていれば争いは起きなかった。彼らの望む未来に盤石の安心があるのかもしれない(誰の?)
おかしいよね。苦しんでるのは私だし、これからも苦しみつづけるのは私だ。それなのに無責任だよ。もっと苦しんでほしいみたいにレールを敷くのは。いつか私は彼らの元から去るのに。
彼も私も歌わない。
彼はギターを弾きながら歌う道を、私は歌いながら踊る道を選ばなかった。彼はギターを弾きたいだけで、私は踊りたいだけだった。それを誰かに見てもらうことでしか自分の存在意義を見いだせなかった。
でも、不幸ではない。見てくれるひとがいる。やりたいことがある。
(プロにはなれなくとも)
彼がだんだんとギターを弾くスピードを上げていく。私はチェアーからスレッドに切り替える。右足を痛めているから足の入れ替えは上手くいかない。そこから一点倒立を目指す。頭で全体重を支える。が、未熟な頭と首の筋肉と骨がそれを許さない。倒れる。身体を手で支える。痛みと負荷をぎしり、と感じる。人間は太古の昔から飛べないようにできていた。
それでも宙を舞うひとがいる。舞おうとするひとがいる。重力に逆らって。それがダンス。
彼が弾くフラメンコ。早弾きのトレモロ。髪が揺れるたびに見える紫。光る窓。見知らぬ国の情熱を運んで私に命じる。「踊れ」と。自由に、自由に、もっと自由に踊れ、と。
もっと楽な道があったはずだった。両親の言うことを聞いていれば争いは起きなかった。彼らの望む未来に盤石の安心があるのかもしれない(誰の?)
おかしいよね。苦しんでるのは私だし、これからも苦しみつづけるのは私だ。それなのに無責任だよ。もっと苦しんでほしいみたいにレールを敷くのは。いつか私は彼らの元から去るのに。
彼も私も歌わない。
彼はギターを弾きながら歌う道を、私は歌いながら踊る道を選ばなかった。彼はギターを弾きたいだけで、私は踊りたいだけだった。それを誰かに見てもらうことでしか自分の存在意義を見いだせなかった。
でも、不幸ではない。見てくれるひとがいる。やりたいことがある。
(プロにはなれなくとも)



