怪我をした。
もう何度目かの。

超高熱みたいな長い夏が嘘のように11月はひんやりとした日々が続いていた。そのせいだろうか。
高温に慣れて膨張した皮ふと筋肉と骨が急激な気温差に悲鳴を上げた。右足首をねんざした。折ったほうがましだと言うくらいのひどさで。
松葉杖で登校した私にクラスメイトたちは大袈裟なくらい心配してくれた。

紅葉した校庭の桜の葉が薄汚れたガラス窓の向こうで小さくビブラートを奏でていた。
顔のない少年少女たちにとって、私のねんざなんてハロウィンとかクリスマスイブみたいな非日常のイベントなんだな、と思った。窓に映る彼らの背を見ながら。あぁ、また私の悲劇はSNSで全世界にさらされるんだな、って。

両親は怒り狂っていた。「心配」と言うフィルターをかけた私怨みたいな怒り方だった。恥も外聞もない。
彼らの怒りは私が怪我をしたことで、差し迫った期末テストに影響が出ることに向かっていた。彼らにとって勉強の妨げになることは全部発狂の対象になった。
ブレイクダンス。

私のいちばん大切なものを否定することで親の威厳を保とうとする。大人と言う名の未熟な生き物。

「親の金で生活しているうちは何言っても無駄」