「誠に恐れ入りますが、現在主人は公務のため手が離せず……しばしお待ちいただけますと、幸いにございます」
そう告げて執事は部屋を出ていく。
扉が閉まった後、私は不躾にならない程度に周囲を見回してみた。
飾り立てずとも、職人の技巧が施されている家具。そして落ち着きのある赤と緑で統一された色合い。金や銀色で華美な装飾を好む王国とは正反対の部屋。どちらかと言えば、この応接室のような部屋が私は好みだ。
そして目の前のテーブルには、食べやすそうな茶菓子やパンなどが置かれている。お腹も空いたところだったので、ひとつ手にとって口に入れてみた。……うん、とてもしっとりしていてほんのり甘い、紅茶に合うお菓子ね。
……甘味なんて久しぶりに食べたわ。
王国の王侯貴族達は「帝国など蛮族だ! 蛮族が素晴らしい文化など育めるはずがない!」と言っていたけれど、どこを見たらそんな事が言えるのかしら?
そんな事を考えていると、いつの間にか紅茶を飲み干していたらしい。いつの間にか扉の側にいた侍女が現れて、私のカップに紅茶を注いでいた。目が合ったので、微笑んで頭を下げておく。すると相手は一瞬驚いたようだったけれど、「失礼します」と頭を下げて元の位置に佇む。
ここでは敵国の娘であっても、令嬢として扱ってくれるのね……私は目を細めて紅茶を嗜んだ。
そう告げて執事は部屋を出ていく。
扉が閉まった後、私は不躾にならない程度に周囲を見回してみた。
飾り立てずとも、職人の技巧が施されている家具。そして落ち着きのある赤と緑で統一された色合い。金や銀色で華美な装飾を好む王国とは正反対の部屋。どちらかと言えば、この応接室のような部屋が私は好みだ。
そして目の前のテーブルには、食べやすそうな茶菓子やパンなどが置かれている。お腹も空いたところだったので、ひとつ手にとって口に入れてみた。……うん、とてもしっとりしていてほんのり甘い、紅茶に合うお菓子ね。
……甘味なんて久しぶりに食べたわ。
王国の王侯貴族達は「帝国など蛮族だ! 蛮族が素晴らしい文化など育めるはずがない!」と言っていたけれど、どこを見たらそんな事が言えるのかしら?
そんな事を考えていると、いつの間にか紅茶を飲み干していたらしい。いつの間にか扉の側にいた侍女が現れて、私のカップに紅茶を注いでいた。目が合ったので、微笑んで頭を下げておく。すると相手は一瞬驚いたようだったけれど、「失礼します」と頭を下げて元の位置に佇む。
ここでは敵国の娘であっても、令嬢として扱ってくれるのね……私は目を細めて紅茶を嗜んだ。

