「研究員がすまない」
歩きながら公爵様は申し訳なさそうに私へと告げた。私はその言葉を聞いて、迷いなく首を振る。
「私も思いついて張り切ってしまいましたから……お役に立てるかなと思って」
最後の言葉は無意識に呟いてしまっていた。そうか、私は公爵家で自分が有用である事を示したかったのかもしれない。きっと嬉しかったのだ。認めてもらったみたいで。
王国ではずっと私は「して当たり前」が続いていた。穢れた血である格下のお前がやるのが、当たり前だと。きっと自分の落ち着ける居場所が欲しかったのかもしれない。
そのために、私の価値を上げたかったのだ。私が何かしら助けになれば、捨てられないはずだ……と。
公爵様はそんな人ではないだろう、と思っている一方で、捨てられるのではないか、という思いもある。そんな醜い自分の心を嫌悪した。
幸い、私は俯いていたので公爵様に顔は見られていない。けれども、そんな醜い心を隠すかのように、私は揺れに任せて彼の胸元に顔を寄せた。
公爵様も私も声を出さない。彼の足音だけが響いている。その音が心地よい。
そういえば、以前ブレンダがジオドリックに抱き上げられていた事があった。その時ブレンダは、これがお姫様抱っこというものだ、と話していたわね。
あの時ブレンダはこうも言っていた。「お姫様抱っこは好きな人にするものなのよ!」と――。
つまり、ブレンダは……ジオドリックが好きなのは、ブレンダであるという事実を私に見せつけたかったのだろう。まぁ……私はその時「そうなの」としか思わなかったけれど。
それよりも書類が溜まっていたから終わらせたかったのよね。
あ、後こうも言っていたかしら。「好きな人にされたら嬉しいわよね」とも――。
「嬉しい……?」
「エスペランサ嬢、何か言ったか?」
「あ、いえ。何でもありませんわ」
今、私は公爵様にお姫様抱っことやらをされている。あり得ないとは思うけれど、ジオドリックがもし「お姫様抱っこをしてやろう」と私に言ってきたら……きっと逃げたわね。
公爵様は成り行きでこうなってしまったのだけれど……嫌じゃないわ。きっと好意は持っているのね。当たり前ね。今まで良くしてもらったのだもの。婚約者だから――。
そう思った時、私の胸が少し痛んだ気がしたのだけれど、きっと気のせいだろうと思う。
歩きながら公爵様は申し訳なさそうに私へと告げた。私はその言葉を聞いて、迷いなく首を振る。
「私も思いついて張り切ってしまいましたから……お役に立てるかなと思って」
最後の言葉は無意識に呟いてしまっていた。そうか、私は公爵家で自分が有用である事を示したかったのかもしれない。きっと嬉しかったのだ。認めてもらったみたいで。
王国ではずっと私は「して当たり前」が続いていた。穢れた血である格下のお前がやるのが、当たり前だと。きっと自分の落ち着ける居場所が欲しかったのかもしれない。
そのために、私の価値を上げたかったのだ。私が何かしら助けになれば、捨てられないはずだ……と。
公爵様はそんな人ではないだろう、と思っている一方で、捨てられるのではないか、という思いもある。そんな醜い自分の心を嫌悪した。
幸い、私は俯いていたので公爵様に顔は見られていない。けれども、そんな醜い心を隠すかのように、私は揺れに任せて彼の胸元に顔を寄せた。
公爵様も私も声を出さない。彼の足音だけが響いている。その音が心地よい。
そういえば、以前ブレンダがジオドリックに抱き上げられていた事があった。その時ブレンダは、これがお姫様抱っこというものだ、と話していたわね。
あの時ブレンダはこうも言っていた。「お姫様抱っこは好きな人にするものなのよ!」と――。
つまり、ブレンダは……ジオドリックが好きなのは、ブレンダであるという事実を私に見せつけたかったのだろう。まぁ……私はその時「そうなの」としか思わなかったけれど。
それよりも書類が溜まっていたから終わらせたかったのよね。
あ、後こうも言っていたかしら。「好きな人にされたら嬉しいわよね」とも――。
「嬉しい……?」
「エスペランサ嬢、何か言ったか?」
「あ、いえ。何でもありませんわ」
今、私は公爵様にお姫様抱っことやらをされている。あり得ないとは思うけれど、ジオドリックがもし「お姫様抱っこをしてやろう」と私に言ってきたら……きっと逃げたわね。
公爵様は成り行きでこうなってしまったのだけれど……嫌じゃないわ。きっと好意は持っているのね。当たり前ね。今まで良くしてもらったのだもの。婚約者だから――。
そう思った時、私の胸が少し痛んだ気がしたのだけれど、きっと気のせいだろうと思う。


