【番外編更新】虐げられた私の身代わり婚約、そして見つけた幸せ

「一面に全て魔法陣を描いてしまうという案はいかがでしょうか?」

 話し合っていた研究員たちの前で、私が考えた内容を話す。
 今まで私たちは斜めの面にどれだけ上手く魔法陣を描けるのか、という点を重視してきた。私もてっきり一面にひとつの魔法陣しか描けないのだろう、と思い込んでいたのだ。
 けれど、実際はどうなのだろうか。今までの話でこのような方法はなかったはずだ。その上で、自分の魔力を使って魔法陣を紙の束のように積み上げる事はできないだろうか、と思ったのだ。

 そう私が話すと、全員が頭を悩ませているようだ。そんな事ができるのだろうか、と段々周囲が騒がしくなり、議論が始まろうとしたその時――。

「それは面白い考えではありませんかっ! 吾輩、少々試してみたくなりましたぞ!」
「昔から一面ひとつの魔法陣と教わってきましたから、もしこれが成功したら大発見でしょうね」

 所長の言葉に全員が口を閉じる。そして次のシュゼットの言葉に全員が頷いた。
 皆気がついたのだ。議論よりも先に実践した方が良い、という事に。その思いをまるで代弁するかのようにセヴァルが声高に叫んだ。

「いやぁ、ここに魔法陣を描く達人がおりますからねぇ。実際試してみれば、いいと思いませんかぁ〜? 期待していますよぉ、お嬢様」

 普段であれば、期待という言葉に気後れする私。けれどもこの時は何故か「できる」という自信がしかなかった。
 
 研究員たちの視線に晒されながら、私は魔宝石の前に座る。目の前には偽鏡に使われている物と同じくらいの大きさの魔宝石。
 私はいつものように一面に魔法陣を描き始めた。
 魔宝石の一面は拳くらいの大きさだ。斜めの部分になると一回り以上小さくなってしまうので、大体の人が広い面である正面から魔法陣を描いている。
 
 私の魔力を通す特殊な棒を、ペンのように動かして書くのだ。そして自分の魔力で魔法陣を描く。
 描き終えた後は五分程度時間を置く。すると魔法陣が定着するので、次の面に魔法陣を描いていく……が普通のやり方なのだが、ここで私は魔宝石に自分の魔力を込めた。

 魔法陣が壊れないように感覚で私の魔力を乗せていく。壊れない事が分かったので、魔法陣をゆっくり下へ下へと押していく。
 元々魔法陣は宝石の表面に彫っているわけではない。魔力を使って描いているから、物体を透過する事が可能だ。
 ゆっくりではあるが、魔法陣を一番下まで押し込める事ができた。そして私は、二個、三個と魔法陣を増やしていった。