【番外編更新】虐げられた私の身代わり婚約、そして見つけた幸せ

「あ、あの……どうかしましたか?」

 何か場違いな事を言ってしまったのか……いや、もしくは私の意見が気に食わなかったのか……? 一人で不安になっていた私。それがもしかして表情に出ていたのかもしれない。公爵様は我に返ると、慌てて言葉を探しつつ口にした。
 
「いや、エスペランサ嬢。それは素晴らしい案だ! どうして私は今まで思いつかなかったのだろうか……それにサインの位置だけでなく、書式も統一すれば確認しやすく、書きやすいのではないか?」

 ぶつぶつと呟きながら考え込む公爵様。どうやら私の言葉を受け入れてくださったようだ。適当な紙を取り出した彼は、そこに何かしらの文字を書き込んでいる。その後すぐにヘンリーを呼び出し、紙を渡して何かを依頼していた。
 私がそのやりとりを唖然と見ていると、終わった公爵様がこちらにやってきて、私の両手を彼の手で包むように握りしめてくる。まるで玩具を見つけた子どものように目をキラキラと輝かせていた。

「助かった! これで書類の時間をもっと短縮できるかもしれない! 君のおかげだ!」

 握りしめられた手が温かい。ここまで触れられたのは、お母様以外いないかもしれないわね。そんな場違いな事を呆然と考えていた私だったが、公爵様はすぐに自分のしていた事に気づかれたらしい。気づくといつの間にか両手を手から離されていた。

「す、すまない……興奮してしまってつい……」
 
 顔を真っ赤にする公爵様。
 そんな彼を見て、私は思った。公爵様は意外と女性慣れしていないのでは……? 銀髪に青の瞳、そして細身ではあるけれど腕を見る限り筋肉はついている……女性に好かれそうな容姿だと思うのだけれど。
 まあ……人のことは言えない。なんだかんだ私も頬が熱くなっている気がする。恥ずかしさから私は公爵様から視線を逸らした。

「いえ、大丈夫です……」

 声が震えないように注意をしながら話す。公爵様が胸を撫で下ろすのが見えた。
 そんな彼を見ながら、私は手にかすかに残る温もりを感じる。まるでその温かさを忘れないかのように、私は無意識に両手を重ねた。