【番外編更新】虐げられた私の身代わり婚約、そして見つけた幸せ

 その日から一ヶ月。
 所長とヒューを含めた魔術研究所は、いつにも増して賑やかだった。現在は研究所の者ほぼ全員を動員して、国宝鏡の作成に当たっている。ちなみに私はやっと三つ目の魔法陣を込められるようになったところだ。

 数日前から夏の月(ルミナ)となり、二日ほど前に大公家が舞踏会を行ったと聞いた。
 社交界はここから二ヶ月ほど続く。毎年最初の舞踏会は大公家が、最後は王家が主催するのだという。ガメス公爵家は王国と国境が隣接しているため、社交界は王家主催以外全て免除となっていると、教えていただいた。

 所長の話によれば、国宝鏡には魔法陣が組み込まれているらしい。ただ、その魔法陣を短時間で解読する事はできなかったのだという。そもそも、いくつかの魔法陣は見た事のないものだったようだ。
 
「まあ、国宝鏡を見た者は皇族の皆様か吾輩と副所長しかいないですからね! 皇族が触れて光れば問題ないでしょうね!」
「そうですよねぇ〜。偽鏡も言い張れば本物と認識しますからねぇ」

 見えるものが白でも、皇族が黒、と言えば黒になると。そうなるわよね。

「ですから、皇族の方の魔力を込めると淡く光るような魔法陣を込めておけば良いのですよ! そのためには複数の魔法陣を宝石に込めないといけませんがね!」
「そこが問題になるんですよねぇ……」

 セヴァルの言葉に皆が同意する。魔力を識別して光らせる魔法陣、これはこの一ヶ月で作成が終わったのだとか。ただし、魔法陣ひとつに対し、一人分の魔力しか込める事ができないため、皇帝陛下と皇子、皇女殿下の分の魔法陣を書き込む必要がある。この時点で四個の魔法陣を込めなくてはならないのだ。
 
「偽鏡の場所が把握できる魔術も込めたいのですよ! そうすると五個は必要になるじゃないですか!」
「現在魔法陣を三個込める事ができるのは、セヴァルと所長とエスペランサ様ですね」
 
 二個込める事ができる者は多くいるらしいのだが、三個となると後は王宮魔術研究所にいる副所長の二人くらいなのだとか。しかし、今欲しいのはそれ以上の魔法陣を込める事ができる人なのだ。

「残念ながら、私は無理ですねぇ……三個で魔力が限界でしょう」
「吾輩も無理ですな!」

 二人の声が上がった後、全員が私へと注目する。頼みの綱は私、そう言わんばかりの視線が降り注ぐ。皆が私に期待しているようだった。