【番外編更新】虐げられた私の身代わり婚約、そして見つけた幸せ

 握り拳を天に掲げて力説する所長。
 
「所長は研究第一なお方ですからねぇ。所長がいなくても、副所長二人がいれば大丈夫でしょうよ」
「ああ……胃が痛いですぅ……」

 ぼそっと呟いたヒューに、シュゼットが水を差し出している。ああ、彼女は制御不能な者を嗜めるという役目を負っているからか……きっとヒューの気持ちが分かるのね。彼女のセヴァルに対する姿勢が参考になると良いのだけど。
 その間に研究員たちが名前を紹介していく。名前を聞くたびにヒューが、「あぁ……あの論文を書かれた方ですね」と彼らの実績をどんどん当てていくのだ。どうやら彼は王宮魔術研究所では、『歩く論文』と言われているとか。
 そして最後に私となる。ひとつ疑問があるのだけど、私はブレンダと紹介したら良いのかしら? 困惑していた私に助け舟を出してくださったのが、公爵様だった。
 
「彼女は私の婚約者だ。ブレンダ嬢として王国から送り出されてはいるが……彼女の本名はエスペランサ・ホイートストン嬢だ」
「存じ上げておりますよ! その美しい黒髪! そして魔導皇女様にそっくりのご尊顔……吾輩が間違えるはずありません!」

 所長が王宮魔術研究所に入所した頃、お母様はいつも研究所に入り浸っていたらしい。そのため、私を一目見た時にお母様の娘だと分かったのだとか。その時は研究の方に興味が移っていたために、すぐに頭から抜け出たらしい。やはり研究員はどこも変わらないの、と私も公爵様も苦笑いだ。

「吾輩、エスペランサ嬢でしたら魔導皇女……いえ、魔導公爵夫人になれるはずだと考えております! 一緒に魔術を極めようではありませんか!」

 どこかで聞いた事があるような文言。そういえば、セヴァルが昔そんな事を言っていたような気がする。セヴァルと所長は多分研究に対する思考が似ているのね……だから言動もそっくりなのかもしれないわ。
 
「所長! お嬢様は現在複数の魔法陣をふたつまで書き込めていますよぉ〜」
「おお! それは素晴らしいですね!」

 まるで子どものように盛り上がっている二人。それを止めたのはシュゼットであった。