【番外編更新】虐げられた私の身代わり婚約、そして見つけた幸せ

 ユーイン殿下の依頼を受けた後、私たちは偽鏡(ぎきょう)を持ってシュゼットたちのいる研究室へと向かった。
 国宝鏡は特殊な仕掛けが施されている。それは、皇族が触れると中心にある透明な宝石が淡く光り輝くのである。今回本物だと証明するためにも、魔術を利用して仕組みを再現してほしいとの事だった。
 それを公爵様がシュゼットたち一同に告げると、研究員たちは奇声を上げ始める。セヴァルにおいては、両手を上げて子どものように飛び跳ねているではないか。シュゼットも身体が少し揺れているので、よほどこの研究が楽しみらしい。

 早速研究に向かおうとする研究員たちを止めたのは公爵様だった。
 
「この件は一旦止めていてくれ。ユーイン殿下の采配により現在、魔術研究所の研究員の二人がこちらに向かっているようだ。一人は国宝を手に取って見た事がある者らしい」
「それでしたら、一から作らなくて良い、という事ですね!」
「ああ。ついでと言ってはなんだが……王宮の魔術研究と公爵家の研鑽とを照らし合わせる事となった。今回は社交の時期と重なるから、と理由をつけて早めてもらった形になる。そこはシュゼット、任せたぞ」
「承知いたしました」
 
 研究員は話しが終わったと言わんばかりに、公爵様に頭を下げて各自の部屋に戻っていく。その様子を見て、シュゼットがため息をついた後に公爵様へと謝罪をした。研究員はいつもこのような感じらしく、公爵様は気にしていないようだが。
 私たちは彼女の見送りで、本邸に戻ろうと背を向けた。すると先程一番に研究所へ入っていったセヴァルがこちらへと戻ってきたのだ。そしてなぜか私に声をかけてきた。

「お嬢様、この後お時間はありますかぁ? もしよろしければ本日は私が講師をさせていただきますが〜」

 そういえば、シュゼット以外の研究員にも講師をしてもらった事があるけれど、セヴァルには一度も話を聞いた事がなかったな、と思う。私はこの後予定がないので問題ないけれど……これは一応公爵様に許可をいただいた方がいいのだろうか。
 公爵様を一瞥すると、彼も困惑した表情でセヴァルを見ている。この申し出に公爵様自体が驚いているみたい。

「セヴァル、良いのですか?」
「勿論ですよぉ、私も講師はできますから〜」

 その言葉に公爵様が目を細めている。まるで本当に可能なのか疑っているよう。一方で私は少し浮き足立っていた。魔法講座も好きなのだけれど、私個人としては魔術の方に興味がある。魔法陣を綺麗に美しく描けた時の達成感、そしてそれが思い通りに発動する時の感動……あれは忘れられないわ。
 案じるような目を向ける公爵様に私は微笑んでから、セヴァルへ顔を向ける。

「セヴァル、今日はよろしくお願いしますね」
「こちらこそぉ」

 不安げな表情でこちらを見ている公爵様を背に、私はセヴァルの後ろについて研究所へと入っていった。