気持ちが落ち着いたと分かったのか、公爵様は私に微笑んだ。
「少しは私が役に立っただろうか? もしまた何かあれば、相談してくれ。私たちはこれからを共に生きる者同士だからな」
「ありがとうございます」
王国にはこんな事を言ってくれる人はいなかった。私は彼の隣にいて良いのだと実感する。
感謝の意を示すために小さく礼をした。そしてすぐに顔を上げると、公爵様はそっぽを向いて頭を掻いている。心なしかソワソワしているように思うのは、私の気のせいだろうか?
「公爵様?」と声をかけると、「ああ……」と返事が来るけれど、その言葉はどこか上の空でぎこちない。
首を傾げていると、彼は意を決したのか私の目の前に何かを取り出した。驚いて思わず目を瞑ってしまった私は、恐る恐る目を開ける。するとそこには可愛らしい桃色のウサギの人形があった。しかも私の顔ふたつ分ほどあるだろうか……結構な大きさの人形だ。
まだまだ私と視線を外している公爵様へと、私は声をかけた。
「あの……、これは……?」
ぎぎぎぎ、と言いそうなほどゆっくりとこちらへ顔を向けた公爵様。私と視線が交わると、彼の顔がこわばった。
「もし良ければこれを貰ってくれないか? ……人形を抱きしめていると心が安らぐ、と侍女長に聞いたからな。これは私が以前から持っていた人形なのだが……良かったら使ってくれ」
きっとこれを渡すために、公爵様は気もそぞろだったのだろう。私は公爵様とウサギに何度も視線を送った後、人形へと手を伸ばして受け取った。人形は子どものおもちゃだ、と言われているけれど嬉しかった。私は一度も人形を手にした事がなかったから。
人形を胸に抱くと、先ほどまで公爵様が触れていたからだろうか、ほんのりと温かい。嬉しさからぎゅっと抱きしめる。
「よろしいのですか?」
公爵様は『以前から持っていた』と仰っているけれど……それにしては形も崩れていないし、綺麗だと思う。その意味も込めて、大丈夫かどうか確認したのだけれど……。
「ああ。飾ってあるより可愛らしい君に使ってもらえる方が良いだろうからな」
「……へ?」
可愛らしい? 私が? その言葉に頬が熱くなる。
今まで自分の容姿を褒められた事がなかった私は、それに耐性がない。最近リーナやマルセナはよく綺麗と褒めてくれていて、私も慣れてきたかななんて思っていたのだけれど……男性に言われるのは、なんと言うか破壊力があったわ。
幸い、動揺から無意識に上がった声は公爵様に聞こえなかったようだ。恐る恐る顔を上げると、公爵様は口角を上げて笑っている。きっと彼も意識せず口にしたのかもしれない。
私は改めてお礼を告げた後、恥ずかしさから逃げるように部屋へと入っていた。
「少しは私が役に立っただろうか? もしまた何かあれば、相談してくれ。私たちはこれからを共に生きる者同士だからな」
「ありがとうございます」
王国にはこんな事を言ってくれる人はいなかった。私は彼の隣にいて良いのだと実感する。
感謝の意を示すために小さく礼をした。そしてすぐに顔を上げると、公爵様はそっぽを向いて頭を掻いている。心なしかソワソワしているように思うのは、私の気のせいだろうか?
「公爵様?」と声をかけると、「ああ……」と返事が来るけれど、その言葉はどこか上の空でぎこちない。
首を傾げていると、彼は意を決したのか私の目の前に何かを取り出した。驚いて思わず目を瞑ってしまった私は、恐る恐る目を開ける。するとそこには可愛らしい桃色のウサギの人形があった。しかも私の顔ふたつ分ほどあるだろうか……結構な大きさの人形だ。
まだまだ私と視線を外している公爵様へと、私は声をかけた。
「あの……、これは……?」
ぎぎぎぎ、と言いそうなほどゆっくりとこちらへ顔を向けた公爵様。私と視線が交わると、彼の顔がこわばった。
「もし良ければこれを貰ってくれないか? ……人形を抱きしめていると心が安らぐ、と侍女長に聞いたからな。これは私が以前から持っていた人形なのだが……良かったら使ってくれ」
きっとこれを渡すために、公爵様は気もそぞろだったのだろう。私は公爵様とウサギに何度も視線を送った後、人形へと手を伸ばして受け取った。人形は子どものおもちゃだ、と言われているけれど嬉しかった。私は一度も人形を手にした事がなかったから。
人形を胸に抱くと、先ほどまで公爵様が触れていたからだろうか、ほんのりと温かい。嬉しさからぎゅっと抱きしめる。
「よろしいのですか?」
公爵様は『以前から持っていた』と仰っているけれど……それにしては形も崩れていないし、綺麗だと思う。その意味も込めて、大丈夫かどうか確認したのだけれど……。
「ああ。飾ってあるより可愛らしい君に使ってもらえる方が良いだろうからな」
「……へ?」
可愛らしい? 私が? その言葉に頬が熱くなる。
今まで自分の容姿を褒められた事がなかった私は、それに耐性がない。最近リーナやマルセナはよく綺麗と褒めてくれていて、私も慣れてきたかななんて思っていたのだけれど……男性に言われるのは、なんと言うか破壊力があったわ。
幸い、動揺から無意識に上がった声は公爵様に聞こえなかったようだ。恐る恐る顔を上げると、公爵様は口角を上げて笑っている。きっと彼も意識せず口にしたのかもしれない。
私は改めてお礼を告げた後、恥ずかしさから逃げるように部屋へと入っていた。

