【完結】虐げられた私の身代わり婚約、そして見つけた幸せ

 しばらく物思いに耽っていると、隣のバルコニーから声がかけられた。そこにいたのは、公爵様だ。
 慌てて私は頭を下げる。

「頭を上げてくれ。先程から君がずっとここにいたので、気になって声をかけてしまった」
「わざわざ気にかけていただいたのですか……?」

 公爵様は私なんかよりも多忙なはずだ。
 驚きから無意識に目を見開いていたのか、彼は私の言葉に同意した。

「お疲れでしょうに……骨を折らせてしまい、申し訳ございません」
 
 私が再度礼を執ると、公爵様は深い深呼吸を一度する。そして私に向けて微笑んだ。

「何を言う。エスペランサ嬢が手を(わずら)わせている事などない。むしろ、私たちにもっと注文をつけてもいいのだが」
「それはできませんわ。今でも面倒をお掛けしていると言うのに……」

 間髪入れずに告げる。今でも充分良くしてもらっているのだ。これ以上臨んだら、罰が下されそうよ。
 そんな事を考えていた私に公爵様は声をかけてきた。先程は口角が少し上がっていたけれど、今は真剣な表情に戻っている。

「それよりも、殿下の話だ。色々エスペランサ嬢も思うところがあったのではないか?」
「……はい」
 
 今丁度それを考えていました、とは言えなかった。自分の弱さがさらけ出してしまうような気がして。
 ためらいがあった私は返事をするのが少し遅くなってしまった。そしてその後、すぐに私の左肩に手が優しく乗せられる。ハッと顔を上げると、そこには優しい表情でこちらを見ている公爵様がいた。

「君が気にしている点は、黒髪を持つ者が『予言の巫女』の能力を発現するというところだろう?」