【番外編更新】虐げられた私の身代わり婚約、そして見つけた幸せ

「そういえば休戦条約では王国と帝国で一人づつ嫁がせる、という条件でしたね。こちらからはバレンティナ元皇女殿下を、あちらからは当時の王弟殿下……現女公爵の夫君が嫁がれたのですよね」

 公爵様の言葉に、ユーイン殿下は同意する。
 当時休戦条約に一番力を入れていた方が王弟殿下だったそうな。それもあって、条約反対派……当時王太子だったグレゴリー筆頭に彼が嫁ぐよう圧をかけられたのだとか。と言っても、王弟殿下も王国では生きづらかったらしく、「帝国の方が自由で気楽だ」と言って現在も楽しく女公爵を支えているらしい。
 
「それ以外にも条約にはもうひとつ盛り込まれていた。それがデヴァイン王国の次代の王太子に、バレンティナ元皇女が産んだ娘を嫁がせるという話だ。そして王国の貴族令嬢をガメス公爵家へと迎え入れる、これが今回叶った形となる」

 元皇女が産んだ娘……もちろん私の事である。だからブレンダは禁呪で名前の入れ替えを行ったのだ。と言ってもブレンダの方は王国内であるので、暗黙の了解で王国貴族たちは理解してくれるだろう。対外的には自分がエスペランサだと言い張れば問題ないとでも思ったのか。
 ブレンダも私も、国外の者に会う事など一度もなかった。だから、私さえなんとかなれば誤魔化せると思ったのだろう。
 
「ちなみにエスペランサ嬢がここへ嫁いでくるのも、予言にあったのでしょうか?」

 公爵様の言葉に、ユーイン殿下は首を縦に振る。全てはお母様の予言通りに進んでいる……その事に私は息を呑んだ。
 
「王国は今もまだ休戦協定を結んでいるが、脅威である事には変わりない。当時皇太子であった我が父……皇帝陛下の話によれば、数年間でも面倒な火の粉を振り払う手間がなくなるのならと条約には賛成していたのだ。だが、両国にそれぞれ嫁がせる条項は、入れるのを渋っていたと聞いている」
「王国は排他主義ですから、皇女殿下の扱いも手に取るように分かりますね」

 結局お母様も私も虐げられてきた。この事を当時の皇帝陛下も予想できていたに違いない。だが、これは母が押して押して入れた条項だと言う。それは何故だったのだろうか。

「バレンティナ元皇女はこの休戦条約が続かない事を予言していた。だから、次の戦争の際に帝国が勝利できるようにと力を尽くしたのだ。帝国も王国に対して充分な準備を行なってきた。彼女の働きは、我々にとっても大きなものだ。一方で君には何も伝える事ができずに、ここまで辛い思いをさせてしまった。それは本当に申し訳なかったと思っている」

 頭を下げようとするユーイン殿下を私は静止する。

「頭を上げてください! ユーイン殿下が悪いわけではありませんので」

 お母様は未来をどこまで見据えていたのだろうか。私が公爵家で幸せがやってくる事を知っていたのかは分からない。けれども、お母様は確信していたのだ。私は王国ではなく、帝国で幸せになる事を。