それから一週間。
 私は魔法の講義と魔術の講義を受けていた。講義は講師役であるジャイルズやシュゼットが本を使用しながら行うので、疑問があればすぐに訊ねる事ができるのもありがたい。
 今もジャイルズの魔法講義を受けていた私。すると、扉の外が慌ただしい事に気がついた。
 二人で顔を見合わせる。首を捻ったジャイルズが侍女に話を聞くためにドアノブへと手を伸ばそうとした。しかしそれと同時に、扉が勢いよく開く。

 開いた扉に顔が当たったジャイルズは、相当痛かったらしく顔を覆っている。どうやら扉を開けたのはリーナのようだ。

「リーナちゃん、扉を開ける時はノックしてくれないか……?」
「も、申し訳ございません〜!」

 ぶつかったところをさするジャイルズ。リーナもどうしたら良いのか分からないのだろうか、狼狽えている。話が進まないであろう事を察したジャイルズが、彼女に声をかけた。

「もしかしてそろそろ昼の時間か?」

 確かにお腹の空き具合からみると、昼に近いのかもしれない。けれども、お昼だけでこんな慌ただしい事があるのだろうか、と私は思う。リーナはジャイルズの言葉で我に返ったのか、彼女がここに訪れた理由を話し出した。

「そ、それどころじゃありません! 第二皇子殿下が……屋敷にいらっしゃいました!」
「第二皇子殿下って、ユーイン殿下か?!」
「はい、ユーイン殿下です!」

 そう聞いて、騒がしいのに納得がいく。
 もし公爵様が殿下の来訪を聞いていたら、あの方の事だ。前もって準備をしているはず……。使用人だけではなく、私にも必ず連絡が入っているはずだ。
 けれども、こんなに屋敷が騒々しいという事は……もしかしたら今回は事前の通達がなかったのかもしれない。非常事態だと把握した私はジャイルズに魔導士団へと戻るよう伝える。そして私は部屋へと戻り、身支度を整え始めた。