吹っ切れたのか、顔を上げ外へと響かない程度に大声で話すレオネル。ヘンリーは驚いたようにまぶたを持ち上げた。
「まさかあんなに素敵な令嬢だとは思わなかったんだ! 入室して目が合った瞬間、人生で初めて女性に見惚れてしまった。まさか事前にもらっていた絵姿とは似ても似つかない凛とした美しい女性が私の元に訪れるなんて思わないだろう?! それに俺や公爵家の事を怖がる事もなく、背筋を伸ばして前を見据える姿は、今までのどの女性よりも魅力的だ!」
そこまで言い切って、レオネルは我に返ったらしい。ほんのりと耳が赤い。ヘンリーは「おやおや」と思った。ここまで饒舌になる坊ちゃんも珍しい、と。
エスペランサと出会った時と同じ表情をしている。言うのは野暮だろう、とヘンリーは考えた。
「そうですねぇ。ジャイルズから聞きましたが、軍部の時も坊ちゃんは見学に来る令嬢からよく声を掛けられていたとお聞きしましたね。歯にも棒にもかけられなかったと。そう考えれば、確かにエスペランサ様は、坊ちゃまのお心に適うご令嬢でございましょうね」
「あいつ……そこまで言ったのか……」
レオネルの同期である魔導士団ジャイルズ。
彼はレオネルが公爵になる前……王宮に勤めている時からの仲だ。
前公爵のあだ名が『血濡れの死神』。その話を聞いて、他家の令嬢が震え上がってしまったようだ。レオネル本人は鎌ではなく剣を使用するのだが、血濡れの死神の異名は印象強いらしく、レオネルへの婚約の申し込みが全く無かったのは昔の話。
そんな彼の元にエスペランサという可愛らしい女性が来たから、レオネルの心は……さあ大変!
彼はバツの悪い表情を見せながら、ヘンリーに話し始めた。
「……ここからは言い訳になる。正直なところ、エスペランサ嬢と視線が交差した瞬間、直前まで頭の中で考えていた確認事項などがすっかり抜けてしまった……だから何も考えずに『君は、本当にブレンダ嬢なのか?』と聞いてしまったのだと思う」
「おやおや……まさかこんな坊ちゃんが初心だとは……」
ヘンリーは口数の多いレオネルを見て、思わず呟いていた。あまりにも小声だったため、幸いレオネルには聞かれていないようだ。眉間に皺を寄せたレオネルはヘンリーに声をかけた。
「何か言ったか?」
「いえ、何も言っていませんよ」
澄ました表情で微笑むヘンリー。レオネルは知っている。この表情をした時の彼は、何も言わない事を。レオネルはひとつため息をついた後、話題を変える事にした。
「まさかあんなに素敵な令嬢だとは思わなかったんだ! 入室して目が合った瞬間、人生で初めて女性に見惚れてしまった。まさか事前にもらっていた絵姿とは似ても似つかない凛とした美しい女性が私の元に訪れるなんて思わないだろう?! それに俺や公爵家の事を怖がる事もなく、背筋を伸ばして前を見据える姿は、今までのどの女性よりも魅力的だ!」
そこまで言い切って、レオネルは我に返ったらしい。ほんのりと耳が赤い。ヘンリーは「おやおや」と思った。ここまで饒舌になる坊ちゃんも珍しい、と。
エスペランサと出会った時と同じ表情をしている。言うのは野暮だろう、とヘンリーは考えた。
「そうですねぇ。ジャイルズから聞きましたが、軍部の時も坊ちゃんは見学に来る令嬢からよく声を掛けられていたとお聞きしましたね。歯にも棒にもかけられなかったと。そう考えれば、確かにエスペランサ様は、坊ちゃまのお心に適うご令嬢でございましょうね」
「あいつ……そこまで言ったのか……」
レオネルの同期である魔導士団ジャイルズ。
彼はレオネルが公爵になる前……王宮に勤めている時からの仲だ。
前公爵のあだ名が『血濡れの死神』。その話を聞いて、他家の令嬢が震え上がってしまったようだ。レオネル本人は鎌ではなく剣を使用するのだが、血濡れの死神の異名は印象強いらしく、レオネルへの婚約の申し込みが全く無かったのは昔の話。
そんな彼の元にエスペランサという可愛らしい女性が来たから、レオネルの心は……さあ大変!
彼はバツの悪い表情を見せながら、ヘンリーに話し始めた。
「……ここからは言い訳になる。正直なところ、エスペランサ嬢と視線が交差した瞬間、直前まで頭の中で考えていた確認事項などがすっかり抜けてしまった……だから何も考えずに『君は、本当にブレンダ嬢なのか?』と聞いてしまったのだと思う」
「おやおや……まさかこんな坊ちゃんが初心だとは……」
ヘンリーは口数の多いレオネルを見て、思わず呟いていた。あまりにも小声だったため、幸いレオネルには聞かれていないようだ。眉間に皺を寄せたレオネルはヘンリーに声をかけた。
「何か言ったか?」
「いえ、何も言っていませんよ」
澄ました表情で微笑むヘンリー。レオネルは知っている。この表情をした時の彼は、何も言わない事を。レオネルはひとつため息をついた後、話題を変える事にした。

