【番外編更新】虐げられた私の身代わり婚約、そして見つけた幸せ

「それは助かるが……良いのか?」
 
 公爵様の言葉に私は頷く。折角母から譲り受けた……多少はホイートストン公爵の恩恵もあるであろう魔力だ。宝の持ち腐れであるよりは、役立つのであれば研究に生かしてもらった方がいい。

「ええ。ですが、私……魔法ですら使えませんから、皆さんにご迷惑をお掛けするかもしれません」

 王国で一切魔法の練習をしていない。だからそんな私が一から色々と覚えるには時間がかかると思う。そこは本当に申し訳ないと思っている。
 視線を落とし、申し訳ないと思いながら話せば、セヴァルは目を輝かせて話し始めた。

「いえいえ! お嬢様は事情がおありでしたからねぇ! ああ〜、楽しみでございます! 第二の魔導皇女……いえ、第二の魔導公爵夫人となられるのですね!」
「魔導公爵夫人……」

 セヴァルの言葉は、私の心に暗い影を落とす。本当に私は母と同じような高みに登る事ができるのだろうか……喜ぶセヴァルを尻目に、緊張が走る。
 そんな私の背中をポン、と軽く叩く人がいた。公爵様だ。彼は私のことを優しい目で見つめていた。

「エスペランサ嬢は好きなようにやってくれ。できるに越した事はないが、できなければ、できないでいい。人には得意不得意がある。楽しんでやってくれたらそれでいい。私としては……君が笑って過ごしてくれれば、それで良い」
「そうですよ、エスペランサ様! エスペランサ様は今まで大変な思いをされてきたと聞いております! ここでは肩の力を抜いて、気楽にお過ごしください!」
「公爵様……リーナ……」

 思わず私は公爵様へと顔を向ける。彼の瞳は優しい。そしてほんのり耳が朱に染まっているような気がした。
 次にリーナへと視線を送る。彼女は握り拳を作り、気合を入れているようだ。二人の言葉が光となって、不安が少しかき消された気がする。そうね、二人の言う通り、気楽にやってみたらいいのかもしれない。

「最終的には私たちがバレンティナ様のように魔宝石に魔法陣を書き込めるよう研究しますので、そこはご安心ください」

 シュゼットの言葉に私はお礼を告げる。
 そう、ここはもう王国じゃない。失敗が許されなかったあの時じゃないのね。

 王国で受けた心の傷はまだ癒えていない。まだ婚約白紙の件から一ヶ月しか経っていないのだから当たり前か……。
 頭では分かっていても、心が追いついていない。けれども、いつかは……心も追いつけるようになる気がする。じんわりと温かくなる心を感じた私はそう思った。