替えられた婚約、見つけた幸せ

「おお、いいですねぇ……ほうほう、これは……!」

 板に手を置いてしばらくして、部屋に置かれていた様々な魔道具が光り始めた。首を傾げていた私にシュゼットが教えてくれたのだが、この部屋に置いてある魔道具は魔力測定器の板と連動しているらしい。
 板に乗せるだけで他の魔道具も反応し、結果は全てセヴァルが見ている板の上に現れるんだとか。

 手を動かさないように気をつけながら、少しだけ周囲を見回すと、確かにセヴァルの目の前には大きな板が置かれている。
 
「お嬢様の得意魔法は……あー、いいですねぇ! ぜひ研究所に来て欲しいです! 魔力量も素晴らし――いてっ」
「もう記録は取れたでしょう? エスペランサ様に告げることはないの?」

 今度は握り拳で頭を殴られたセヴァル。とてもいい音が聞こえたので、相当痛かったのだろう。彼は殴られた部分をさすりながら、私へと顔を向けた。
 
「ああ〜申し訳ございませんでしたねぇ! 板から手を離してよろしいですよ〜」
 
 私が手を離すと、全ての魔道具の光が消える。どうやら連携しているというのは本当だったようだ。帝国は技術的にも進んでいるのだな、と感心した。
 セヴァルが頭の痛い部分を押さえながら、引き続き板を見ている一方で、シュゼットは私に一枚の紙を持ってくる。

「エスペランサ様、これがあなたの魔力についての詳細ですよぉ」
「え、こんなに分かるものなの……?」
 
 思わず呟いてしまったほど、様々な項目が書かれていた。
 現在の魔力量だけでなく、魔力量の推移予測と今後の成長推定……得意属性を特定するだけでなく、属性ごとにどのランクまでの魔法を使う事ができるかの推測まで。魔力量しか分からない王国と比べると、雲泥の差である。
 私の言葉を聞き逃さなかったセヴァルが、満面の笑みをたたえた。

「そうなんですよ〜! これ、全部ここで作ったのですよぉ〜」
「癪ではありますが、確かにこれらの魔道具はほぼ全てにセヴァルが関わっておりますね」

 非常に嫌そうな表情で話すシュゼット。どうやら褒めると調子に乗って話を聞かないために、あまり調子に乗らせたくないらしい。

「お嬢様! このデータを少々研究に利用してもよろしいでしょうかねぇ?」

 新しいおもちゃを与えられた子どものように目を輝かせるセヴァル。言葉が少ない、と怒られながらもシュゼットが補足してくれた。
 
「実はエスペランサ様のデータを見て、気になる点がございまして。それで少しお話を聞かせていただきたいなと思った次第です」
「ほう、それは私も気になるな。エスペランサ嬢、私も聞いてもいいだろうか?」

 仕事の時間は大丈夫だろうか、と思うけれど……きっと大丈夫なのよね。そう思い直した私は、シュゼットに別の部屋へと案内された。