「はいはい、あなたの意見はじゅーぶんに理解しているつもりよ。ほら、エスペランサ様を待たせないで」
「そうでしたねぇ! お嬢様の魔力を調べなければ!」
本気で忘れていたのか、軽く手を叩いたセヴァルは、私に「どうぞ」と声をかけた。
「お嬢様の魔力を測りますが、私が『離していいですよ』と告げるまで、そのまま板に手を載せておいて下さいねぇ」
「ええ、ありがとう」
板を目の前にしてやっぱり以前の魔力測定を思い出してしまう。
周囲を見ると、セヴァルの期待したような目が一番に見えた。そして次に見えたのはシュゼット。彼女も顔に出ないように気をつけているかもしれないけれど、私の魔力に興味津々の様子は隠せていない。
魔導皇女と言われていた母。そんな母を持つ私なのに魔力が少なかったらどう思われるのだろうか……また落胆される?
王国でも私の居場所はなかった。じゃあ……ここで失望されたら、私はどこに行けばいいの?
心に留めていた負の感情が頭の中を駆け巡る。今まで留めていた感情が、測定器をきっかけにあふれ出してしまったようだ。
手が震える。揺れを止めるために力を入れるけれど、それでも小刻みに震えていた。
早く板に置かないと、みんなに怪しまれてしまう……そう思っても、私の身体は動いてくれない。
目の前にいるセヴァルは不思議そうに私の手を見ている。早く、早くと思いながら無意識に私は目を瞑った次の瞬間――。
ポン、と肩に誰かの手が置かれた。思わず後ろを振り返ると、そこにいたのは公爵様だった。
「顔色が悪い。測定は今度にしてもいいぞ」
「えっ! そんなぁ、ここまで来たのに……」
「セヴァル、静かに!」
後ろからセヴァルとシュゼットが何かを話す声が聞こえたが、余裕がない私には言葉は聞き取れていない。私はこの時、公爵様の顔しか目に入っていなかった。
彼の表情は本当に私を心配してくれているものだ。目を見て優しさを感じていた。
だからだろうか……いつの間にか手の震えは止まっていて、心にも落ち着きが戻ってくる。私はそれを実感するのと同時に、首を横に振った。
「ありがとうございます。もう大丈夫です」
「……そうか」
微笑んで告げたからか、公爵様は私の肩から手を離す。私の返事を聞いたセヴァルが歓喜を上げた瞬間、シュゼットに頭を叩かれていた。それを偶然見た私は、笑いをこぼす。
改めて板の前に立つ。内に張り詰めていたものが和らいだのか、先ほどのような恐怖はなかった私は、ゆっくりと手を板の上に置いた。
「そうでしたねぇ! お嬢様の魔力を調べなければ!」
本気で忘れていたのか、軽く手を叩いたセヴァルは、私に「どうぞ」と声をかけた。
「お嬢様の魔力を測りますが、私が『離していいですよ』と告げるまで、そのまま板に手を載せておいて下さいねぇ」
「ええ、ありがとう」
板を目の前にしてやっぱり以前の魔力測定を思い出してしまう。
周囲を見ると、セヴァルの期待したような目が一番に見えた。そして次に見えたのはシュゼット。彼女も顔に出ないように気をつけているかもしれないけれど、私の魔力に興味津々の様子は隠せていない。
魔導皇女と言われていた母。そんな母を持つ私なのに魔力が少なかったらどう思われるのだろうか……また落胆される?
王国でも私の居場所はなかった。じゃあ……ここで失望されたら、私はどこに行けばいいの?
心に留めていた負の感情が頭の中を駆け巡る。今まで留めていた感情が、測定器をきっかけにあふれ出してしまったようだ。
手が震える。揺れを止めるために力を入れるけれど、それでも小刻みに震えていた。
早く板に置かないと、みんなに怪しまれてしまう……そう思っても、私の身体は動いてくれない。
目の前にいるセヴァルは不思議そうに私の手を見ている。早く、早くと思いながら無意識に私は目を瞑った次の瞬間――。
ポン、と肩に誰かの手が置かれた。思わず後ろを振り返ると、そこにいたのは公爵様だった。
「顔色が悪い。測定は今度にしてもいいぞ」
「えっ! そんなぁ、ここまで来たのに……」
「セヴァル、静かに!」
後ろからセヴァルとシュゼットが何かを話す声が聞こえたが、余裕がない私には言葉は聞き取れていない。私はこの時、公爵様の顔しか目に入っていなかった。
彼の表情は本当に私を心配してくれているものだ。目を見て優しさを感じていた。
だからだろうか……いつの間にか手の震えは止まっていて、心にも落ち着きが戻ってくる。私はそれを実感するのと同時に、首を横に振った。
「ありがとうございます。もう大丈夫です」
「……そうか」
微笑んで告げたからか、公爵様は私の肩から手を離す。私の返事を聞いたセヴァルが歓喜を上げた瞬間、シュゼットに頭を叩かれていた。それを偶然見た私は、笑いをこぼす。
改めて板の前に立つ。内に張り詰めていたものが和らいだのか、先ほどのような恐怖はなかった私は、ゆっくりと手を板の上に置いた。

