【番外編更新】虐げられた私の身代わり婚約、そして見つけた幸せ

 遠慮なく顔を近づけてくる彼女。追い詰められたローランドは陥落する。

「すまない……」

 そう彼が謝罪した瞬間、まるで堰を切ったようにイザベラは話し出した。
 
「ズルくないですか? 私もエスペランサちゃんの件に関わりたかったんですけど? 私が外交の準備をしている間に、息子たちと悪戯ですか? とても良いご身分ですこと」

 皇后としての言葉遣いを投げ捨て、ありのままの喋りでローランドに重圧を与えるイザベラ。あまりの圧に、もし知らない貴族たちが見たら普通は止めに入るだろう。けれども執事は、我関せずと言わんばかりに静かに二人を見守っている。
 まあ、執事にしてもこの光景は見慣れたものだったりする。
 
 今や全帝国貴族の淑女の見本。
 そして社交界の華と呼ばれ、淑女たちを引っ張る……流行を生み出す存在。今や若い令嬢たちの憧れの的である皇后イザベラ。
 そんなたおやかで美しい彼女からは考えられない発言が、口から飛び出してくるのだ。

「そんな面白いことに、なんで私も関わらせてくれないのです?!」

 更に大好きな妻に詰め寄られ、ローランドは及び腰になる。惚れた弱みもあるだろうが……昔から彼女に勝てないのだ。

「いや、イザベラが忙しそうだったから……」

 ローランドの口から言い訳がましい言葉がこぼれる。とは言っても、ローランドだって分かっているのだ。これを言ったところで、イザベラの追及は終わらないということを。
 頬を膨らませる彼女にたじたじのローランド。公式の場でしかみていない貴族たちは、知らないだろう。強いて言うなら、重鎮たちと執事の彼くらいか。
 当然、今回もまだまだ続く。
 
「『忙しい』は言い訳になりません! 私だってこのことを知っていたら、仕事を放り……仕事を素早く片付けてから、首をつっこ……参加しましたのに!」
「いや?! 絶対仕事を放り投げてきたよね? 首を突っ込みたいだけだよね?」

 ローランドの指摘に目を泳がせるイザベラ。そしてわざとらしくホホホ、と微笑んだ。
 
 「そんなことございませんわ? そんな面白いこと教えてもらえたら、仕事なんてパパッと片付けましたのに――」
 
 あ、これは仕事を投げ出してでもこっちに来ただろうな……と言わんばかりに態度を変えるイザベラ。ローランドは「だから教えなかったんだ……」とため息をつく。
 まあ、一番の理由はイザベラと末娘がこの話し合いに参加すると、会議が大混乱になる可能性が高いからだった。
 
 彼女はその点でこれ以上話を掘り下げることはできないと判断したらしい。論点を変えて、ローランドを突く。
 
「それよりも! エスペランサちゃんをお茶会に誘おうと思ったら、もう帰っちゃうんですって?! あなたばっかり!」
「いや、ガメス公爵も防衛があるから……」
「だとしても狡いわ! 私だって師の娘さんと話したかったのよ!」