ごくっと息をのむ遥。


「俺は、力を誇示するつもりもないけど、

全く見せないつもりでもない。

歌羽を守るためなら全力で力を注ぐ。

俺は歌羽が好きで愛しているのは、

嘘偽りない事実だ。

俺は高校を卒業したら籍をいれて

二人で一緒に暮らせなくても

お互いがお互いを守れる盾でありたいんだ。」


「それがはっきり聞けたなら、十分だ。遥」


「うん。俺もそうだね。

歌羽を、妹をよろしくね」


「遥くん、歌羽ちゃん、これを」


六花は1枚の紙を差し出した。

「心奏と俺は証人としてすでに記入してある」

「楓兄、何で」


「当たり前だろ。

弟の幸せを願わない兄貴がいるか?」

「楓兄、サンキュ」

「心奏兄さん…ぐすっ」

「あ~もう。

歌羽はそういうの絶対泣くんだから。」

「ありがどゔ〜
 
もう十分すぎるくらい幸せだよぉぉ」


歌羽も遥も次は両親の説得だと覚悟を決め、

思考を練ろうとした瞬間

「あ、親父とお袋には話し行ってて

説得もしてある」

「うちも。母さんも父さんも

嬉しそうだったよ。

心配しないで、歌羽。

そのへんは織り込み済み」


「おめでとう、歌羽ちゃん。

義姉(あね)としては嬉しい限りよ」


「遥くん、笑顔と家族を大切にね」


楓と心奏はそっと席を外し、

二人で話している。

「俺達やり過ぎかなぁ、心奏」

「いや、俺も多分楓と同じことしてるよ」

「お前とは本当に意見が合うな。

でもいいんだ。俺が大事にしてきた弟が

覚悟を決めたんだ。

俺は応援するし、幸せになってもらいたい」


「そう言うけどさぁ、

お前自身は今幸せなのか?」


「十分すぎるくらい幸せだ。

六花が傍にいてくれて

怖いことも何もなく

楽しくやらせてもらってるよ」


「俺もまぁそんなところ。

お互い初期研修だから

大変ではあるけれど、二人でいられる時間は

本当に宝物だから」


遥と歌羽が幸せでありますように。

兄たちはそれを願わずにはいられないのだ。