季節は夏。


夏休みが始まった高校生たち。


カフェバイト三昧の遥。


自宅警備員を続行中の歌羽。
(夏季と冬季のみ家庭教師を呼んでいる。)


プールの監視員短期バイトを実施中の雪。


遥と同じカフェでバイト三昧の陽菜。

そんなこんなで受験生ならぬ


バイトの日々のお三方をよそに

勉強に明け暮れるように


ただただ自宅警備員を続行中の歌羽。


歌羽は知識に対しては貪欲で盲目的だ。


医学的解剖や骨格、筋肉、臓器の位置など


身体に関わる知識。


そうではなくてもAEDの使い方。


薬の知識など


歌羽の頭の中には医学知識が

詰め込まれている。


医学部受験のため 

基本的なお勉強はもちろんのこと


実家に帰省してくる兄から


医学知識を教えてもらうこともある。


内科と外科ならどういった対応をしますか。


ということも父母に聞き

理解を深めたりもするのだ。


バイトで給料をもらいながら


模試を受けたり、塾に通い詰めになりながら


受験に各々備えている。


そんなときだ。遥の携帯に兄から連絡が。


[来週、六花を連れて帰省する。

大事な猫は必ず連れてくること。

 楓(かえで)]


(…楓兄が帰ってくる。
 
六花さんを連れて。

猫は歌羽のこと。

どうするつもりなんだ。)


バイトから帰宅して歌羽に電話する。


「もしもし、歌羽?

バイト終わった」


「お疲れ様、遥

どうしたの?」


「楓兄が帰ってくるって。

歌羽も来いってさ。」


「いつ?心奏(かなで)兄さんが

帰ってくるって

連絡があったんだけど…」


「わかんない。

でもあの二人だから、被りそうだよね」


そうして数日が立った頃楓が帰省してきた。


「ただいま。遥」


「久しぶりだね。遥くん」


「おかえり。楓兄。

六花さんご無沙汰しています。

楓兄帰ってきたのなんで?」


「ん?とくにねーよ?」


(…絶対嘘だ。楓兄が特にないときは

逆に何かあるときだって

心奏兄ちゃんが言ってた。)


「うそうそ、冗談。

ちゃんとあるよ、遥。

そういや猫ちゃん連れてきてねぇなぁ」


「歌羽に声はかけたし来いとも行ったけど

心奏兄ちゃんが帰ってきたらしくて。」


「心奏か…。

しょうがないかぁ。心奏だもんなぁ。」


すっと楓は立ち上がり


「六花、遥、隣の家行くぞ」

「「わかった」」


ピンポーン。


星野家のインターホンを鳴らす楓。


反応は男の声。


「はーい、どちらさま?」


「楓だけど。」



「楓、来たんだ。

今開けるよ。」



「遥、六花もいらっしゃい、

楓、お前とは相変わらず

相思相愛っていうかね」


「「「お邪魔します」」」

入ると歌羽がテーブルに紅茶を準備している。



「お茶菓子はいつものでいいよね?

心奏兄さん」


「歌羽、ここは兄さんがやるから

座ってていいのに」


「そういうわけには…」 


皆してそういう歌羽の不器用さは

理解している。


「座って歌羽」


「遥、なんかごめん。」


「気にしない。

歌羽こういうの苦手じゃんか。」


昔からお茶をそそいで火傷してるのを


よく見てた側からすると不安でしかないのだ。


「んじゃ、お茶も注ぎ終わったところで

本題に入ろうか。

何で俺や楓が帰ってきたのか、

気になってるんじゃないの?

特にお前はそうだろう?遥」


「そういうときの心奏兄ちゃんと楓兄は

真面目な方で怖いんだけど」


「俺はね、遥。

お前の覚悟を聞きに来た。

歌羽を託してもいい男になったのか、

確認したいんだよ」


「俺もまぁそんなとこ。

歌羽を守れる男になったのか。

将来の計画とか、聞きに来た。

遥、お前を覚悟を見せろ。」