恥ずかしい。
 意味わかんない。
 何してるんだろう。

 あんなにズケズケと聞くなんて、非常識すぎる。
 だいたい、名前も年齢も知らない男の子に話しかけるとかキモすぎ。

 嫌われたかな。

 それにしても、あの子、風邪っぽくはなかった。
 でも、顔色は悪くて、声も出せなさそうで、決して万全の状態ではなさそうだった。

 待って、目、見られたかな。
 赤いの気づかれたかな。

 たまに、涙が止まらなくなることがある。

 他の子たちとは何もかもが違いすぎて、悲しくなる時がある。

 私は、朝も夜もバイトしなくちゃ生きていけない生活をしているのに、友達はみんな、お小遣いが少ないとか、服を買ってくれないとか、そういう文句ばっかり言ってる。

 私もそういう文句を言ってみたかった。
 親の愚痴を堂々と言えるようになりたかった。

 愚痴を言いたくなるようなそんな平和な親が欲しかった。

 嘘偽りない親の話をしてみたかった。


 「あ、瑞輝 !
 どこ行ってたの ?
 探したんだよ ?」

 廊下の向こうから由良が駆け寄ってきた。

 「え、どした ?」

 由良は鋭い。
 平然とした顔をしていても、毎回、何かあったのだと気づいてくる。
 今日は目が赤いから尚更だ。

 「やっぱりなんかあった ?」

 こんなに優しい、純粋な目をして尋ねられると本当のことを言ってしまいたくなる。

 でも、そんなことをしたら後悔するだけだと、中学の時、学んだ。
 絶対、ばらさない。

 「別になんもないよ。
 花粉かな」

 「そう…」

 由良はまだ納得していない。
 何か聞きたそうな顔をしている。

 しばらく、黙っていた。

 予鈴が鳴った。
 少しタイミングはズレたけど、悪いよりはマシなタイミングで鳴ってくれた。

 「さ、行こ。
 授業始まっちゃう」

 ドタバタと走る音がする。

 たくさんの人とすれ違う中で、私は知らず知らずのうちに恐怖を覚える。

 学校が怖い。
 友達が怖い。
 先生が怖い。
 人が怖い。

 何もかもが怖い。