今日、あの男の子を見た。

 今日もまた、母親に送ってもらっていた。

 見かけたのは1週間ぶりくらいかもしれない。

 あんまり学校に来ない子なのかな。


 「涼風、ちょっといいか」

 昼休み、弁当を食べ終わった頃を見計らったかのように担任に呼ばれた。

 「あ、はい。
 ごめん、ちょっと待ってて」

 先生についていくと、相談室に着いた。
 廊下とかで適当に話すわけではなさそうだ。
 鼓動が速くなる。

 「ここ、座って」

 「なんですか、いきなり」

 動揺を悟られないようにできるだけ素っ気なく言った。

 「単刀直入に言うが、涼風、バイトしてるのか ?」

 顔がばあっと熱くなる。
 絶対赤くなってる。

 バレないように俯いて首を振った。

 「この学校が、バイトは申請制なのはわかってるよな。
 何も、バイトしちゃいけないわけじゃない。
 ただ、申請してくれって言ってるだけだ」

 「してないですよ」

 少し冷静さを取り戻して顔を上げた。

 申請して許可貰うなら無断でやるのも一緒じゃないか。
 それに、悪い仕事をしているわけじゃない。

 「何か、事情があるのか ?
 申請できない事情やしなきゃいけない事情があるなら、隠さず言って欲しい」

 先生はしつこい。
 なんも知らないくせに。
 生徒の辛さなんかこれっぽっちも理解してやれないくせに。

 公立教師なんて、所詮そんなもん。
 中学の時もそうだったもんね。

 この先生が他と違って力になってくれるとも思えない。

 「だから、してないって !
 ほっといてください」

 つい、怒鳴ってしまった。
 でも、しつこい先生が悪い。

 乱暴に椅子から立ち上がって、ドアを開けた。

 「あ」

 「え、なんで ?」

 神経が立っていたからか、冷たい言い方になってしまった。

 扉のそばにいたのは陽乃と愛衣だった。

 「ごめん、盗み聞きとかする気なかったんだけど」

 「いや、別にいいけど」

 「なんかあった ?」

 愛衣が心配そうに聞いてくる。

 「別になんもないよ」

 「いや、でも、すごい怒鳴り声してたし」

 こっちもしつこい。

 「だから、なんもないって言ってるじゃん !
 ほっといてよ」

 あー、やっぱり私とこの子たちは住む世界が違う。