エンドロール

 涼風さんが学校を辞めると知ったのは、メッセージの文面上でだった。

 『私、学校辞める。
 もう一度、お父さんとも自分とも向き合う』

 メールで送ってきた理由は分からない。
 けど、直接話すのが面倒くさいからとか、気恥ずかしいからとかそんな浅はかな理由じゃないのだけはわかった。

 『うん。
 ちゃんと応援してる』

 それだけ送ってメッセージ画面を閉じる。

 不思議と悲しくはなかった。

 ついに来たかと寂しいような感じはしたけど、前向きな気持ちの方が大きかった。

 『ありがとう』


 僕はそれから毎日学校に行くと決めた。

 体調が悪くても、少しでも涼風さんに会いたい。

 きっと両想いだと思う。
 涼風さんも僕のことを好いてくれていると思う。

 でも、お互い、付き合おうと言い出さなかったし、ましてや好きだとも言わなかった。

 お互いを気遣って。
 僕も涼風さんも色々事情を抱えていて、いつ会えなくなるか分からない。

 もう一緒になろうなんて約束はしたくない。

 守れない約束はしたくない。


 「想來くん、おはよう !」

 週明け、涼風さんの顔色はとても良かった。

 先週は色んなことがあって、疲れきっていたから、明るい顔が見られて嬉しい。

 「今日、図書室来て。
 話がある」

 急に真面目な顔をして言うもんだから不覚にもドキドキしてしまった。

 ドキドキを悟られないようにいつも通り、頷く。

 でも、内心ではもう昼休みが待ち遠しい。
 早く話したい。


 先生に話しかけられたくなくて思ったより早く来てしまった。
 いつもは僕より前に来ている涼風さんが今日は見当たらない。

 窓際の席を陣取って、窓外に目をやる。
 この前までは涼しかった外は、日差しにさらされ、見ていても暑くなる。
 そろそろ夏が近い。

 涼風さんは夏までいてくれるだろうか ?

 「あ、想來くん。
 早いね」

 手を振って笑顔で駆け寄ってくる涼風さんを見ると、こちらまで笑顔になる。

 『うん、早く話したかったから』

 先生に話しかけられたくなかったっていうのと同時に待ちきれなかったというのも、また、事実だった。

 「え ?

 想來くん、やっぱり私のこと、溺愛してる ?」

 からかうようにそう言ってくる。

 でも、僕はもう意地をはらない。

 『うん、溺愛してる』

 ほぼ告白してるのと同じくらいギリギリのライン。
 いや、もう一線を超えているかもしれない。
 けど、一歩くらいいいじゃないか。
 もう、一緒にはいられないと思うから。

 「おお、すごいはっきり言うね。
 嬉しい」

 涼風さんは顔を赤くしている。
 僕の顔も熱い。
 心地よい熱さ。

 「私、今日は、ちゃんと話があって。
 想來くんに」

 無意識のうちに背筋が伸びる。

 暖かな風が窓から入り込む。
 カーテンが揺れて、涼風さんの顔を半分隠した。

 「私たち、青春しよう
 普通に、青春しよう」