「学校、来られなくなった理由、話せる ?」

 担任と母の視線を感じながら、僕は俯いた。

 頑張って来たのに、涼風さんのあのトラブルを目の当たりにして、それどころじゃなくなってしまった。

 「話せない ?」

 話す話さないの問題じゃない。
 涼風さんがつばき ?
 ありえない。
 そんなの、ありえない。

 頭の中にはこれまで見てきた涼風さんの笑顔が蘇る。
 椿輝ちゃんに似てると思っていたあの笑顔。

 離婚したと言ったとき、あまり驚かなかった、けど「やっぱり」と言ったあの涼風さん。

 全てが、全てのパズルが一気にハマっていくように僕の頭の中で涼風さんと椿輝ちゃんが繋がる。

 涼風さんは椿輝ちゃん…。

 「想來 ?」

 その声で我に返った。

 「紙に書いてきたでしょ ?
 想來のためなんだから」

 そうだ。
 まだ確かでもない涼風さんのことでこのタイミングを逃すわけにはいかない。

 僕は作田のことを書いた紙を、何時間もかけて書いた紙を先生に差し出した。

 先生はすぐに読もうとした。
 でも僕は、そんなの無理で、目の前で全てを知っていく先生を見るなんて耐えられなくて席を立った。

 「想來 ?
 どうしたの ?」

 頭を下げて教室のドアを開ける。

 「ちょっと、想來 !」

 「椎名さん。
 いいです。
 帰らせてあげましょう」

 先生の優しい声がする。

 いつか、いつかきっと、自分の口で話せる時が来ると信じてる。