エンドロール

 家に帰ってから、僕は震えが止まらなかった。
 いや、厳密に言えばあのとき、教室を出た瞬間から。

 あいつを見た。
 小学生の時、虐めてきた作田を。

 廊下の壁によりかかって、意地の悪い笑みを浮かべていた。

 もう大丈夫だと思っていたのに。
 最悪の再会を果たしてしまった。

 何度も何度も涼風さんにメッセージを送ろうとしてはやめた。

 涼風さんなら相談に乗って、どうにかしてくれそうだと思う反面、あの子には迷惑をかけられないと思っている自分がいる。

 僕のせいで、彼女まで虐めに遭ってしまったら。


 「想來、今、いい ?」

 学校に行かなくなってから1週間経ったある日、母が部屋に入ってきた。

 リビングに呼ばずに部屋に来るというのは、なにか学校関係の話があるときだ。

 静かに深呼吸をする。

 「今ね、担任の先生からお電話があってね。

 一度、二人で話がしたいって」

 僕は随分と黙ってしまった。
 考えてたというよりは本能的に学校を拒絶していたんだと思う。

 「別に無理にってわけじゃない。
 話したくなかったら話さなくてもいいよ」

 「ちょっと、考えたい」

 考えることなどないのに、そう言った。
 なんとなくそう言わなきゃいけない雰囲気が漂っていた。

 「わかった」

 お母さんは、優しく微笑みを浮かべて、僕の手を握ってから部屋を出ていった。

 このまま行かなかったらどうなるだろう。
 きっと僕は、そのまま学校に行くタイミングを逃して、いよいよ不登校になる。

 僕はもっと弱くなる。

 涼風さんに話したら決心がつくかもしれない。
 涼風さんとのトーク画面を開いて、けどすぐに閉じる。

 トーク画面には僕の言葉ばかりだった。

 思えば涼風さんの話を聞いたことはなかった。
 涼風さんも話したがらなかったけど、僕が聞くこともなかった。

 いつも僕の話ばかり。
 僕の悩みばかり。

 涼風さんにメッセージを送ることはできない。
 これ以上、涼風さんに話を聞いてもらうことはできない。

 僕も強くならなければ。
 ひとりで、強く生きていかなければ。