エンドロール

 皐月の風が吹き過ぎて、少しずつ夏に近づいてきた。

 2日間にかけて行われる体育祭の1日目。

 学校の近くの市民体育館で朝礼をしているとき、さりげなく想來くんの姿を探した。
 でも、想來くんらしき人影は見当たらなくて、少しだけ気分が落ちてしまった。

 「それでは、いよいよ、体育祭の幕開けです !
 皆さん、学級ごとに協力し、安全第一で楽しくやっていきましょう !」

 生徒会長の言葉と共に吹奏楽部の演奏が始まる。

 こういうときはピストルの音とかじゃないのかなとクスッと笑ってしまう。

 「じゃあ、1年生は第二体育館に移動してくださーい」


 体育祭は順調に進んで、1日目はあっという間に終わった。


 2日目は天気が怪しかったけれど、1年生は屋外で行う。

 リレーとサッカーだ。

 私はリレーにしか参加しない。
 人数の問題で、サッカーは男女5名ずつ不参加が出る。
 サッカーは得意じゃないし、それどころか苦手だからこの役目を買って出たのだ。

 「頑張れー !
 ナイス !」

 試合が始まって、コートの外側で応援していると、不意に視界の隅が想來くんらしき姿を捉えた。

 その方向を見ると、体育館から外に出るためのベランダのようなところで試合を見ている彼が見えた。

 水分補給を装って、応援を抜け出す。

 「想來くん !」

 階段を駆け上がり、声をかける。

 「昨日は来てなかったの ?」

 いきなり声をかけられた想來くんは一瞬、驚いた顔をしたけど、頷いてくれた。

 『体調悪かったし、どうせ運動できないから』

 メッセージを送ってくれる。

 「そっか」

 私も並んでベランダの柵に寄りかかった。

 まだ少しだけ春の匂いが残っている風が吹きぬけて、髪を揺らす。

 『涼風さんは試合出ないの ?』

 「うん。
 苦手だし、足手まといになってもね」

 『運動得意そうなのに』

 「え、どこがよ。
 全然、無理だよ」

 『そうなんだ
 意外』

 「うーん、ありがとう、なのかな ?」

 二人で静かに笑う。

 またこうやって会話ができることが心の底から嬉しい。

 無責任に離れていってしまったから、正体を明かすなんて死んでもできないけど、でも、想來くんの隣にいることくらいは許されていいよね。

 彼の力になりたいと、彼が生きる理由に少しでもなればいいと、願うことくらい、許されたい。