山村陽佳里16歳

「あら、三人でどうしたの?」

 放課後、職員室の見園先生を訪ねた。ノートパソコンで何かの資料を作っている最中だ。薄ベージュ色のブラウスに紺色のタイトスカートで、15歳の少年から見ると、とても仕事の出来そうな女性に見える。ついついブラウスから透けて見えるインナーのレースに目が行ってしまうのだが、それに気づいたのか山村が肘をドンと強めに当ててきた。少し気まずい顔をして視線を逸らすと、机の上に置いてある源氏物語の本に気がついた。十二単(じゅうにひとえ)の平安美人が描かれている。

 どの部の顧問にもなっていない事を聞いた山村は、喜色満面ですぐにお願いしに行こうと教室を駆けだしたのだ。それに俺と雨宮シンジが着いていくという形になっている。

「実は先生!・・・・」

 山村が見園先生にお願いしようとした瞬間、シンジが割って入ってきた。

「あ、あの見園先生。その、水原と山村が応援団を作るのに顧問になって欲しいそうなんです!」

 シンジ、なぜお前が言う?しかも、耳までまっ赤だぞ。そもそも応援団に入らないんだったら付いてこなくてもいいんだけど。

 見園先生は順番に俺たちの顔を見ていく。目が合った。

 見園先生とこんなに近くで話をするのは初めてだ。改めて見るとこれが“大人の女”なんだなと思う。まぶたには少しシャドーが入っていて、まつげもカールして大きな瞳の魅力をさらに引き立たせている。香水だろうか?少年の心を波立たせるような不思議で良いにおいが俺の煩悩を刺激する。

「雨宮くんは応援団には入らないの?」

 その疑問は当然だ。当事者じゃ無いシンジが来ているのは不思議だろう。俺も不思議だ。

「え、え、えっと、テニス部は兼部してると公式戦選抜の順位が下がっちゃうんですよね。変なローカルルールがあって」

「あらそうなの?じゃあ、山村さんと水原くんで始めるのね」

 山村が見園先生に設立趣意書と約款を手渡した。そして簡単に概要を説明する。

「ふーん、面白そうね。最初の応援はいつ頃にする予定?」

「はい!7月11日から夏の甲子園の県予選が始まるので、それに間に合うように準備をします!」

 大きな声で山村が返事をした。その声は職員室中に響いて他の教師や生徒がこっちに視線を向ける。ちょっと恥ずかしいんだけど・・。

「元気いいわね。好きよ、元気な子って。いいわ。顧問になってあげる。でも、私、応援団の経験なんて無いから何も出来ないわよ?それでもいい?」

「はい!ありがとうございます!」

「わたしもチアの格好とかした方がいいのかしら?」

 それはちょっと見てみたいような気もするのだが・・・って、シンジ、なぜデレっとした顔をしている?

 こうして顧問も決まり、正式に部活として認められた。そして後日、部室の鍵を受け取る。