詩葉のおつかいについていき、手近な公園のベンチに腰を下ろす。
白い買い物袋からは牛乳の紙パックとお菓子が透けていた。
「…ほうほう。笹岡君が後輩に告られてるのを見ちゃったってわけね」
ベンチの端に買い物袋を置いて、詩葉が20円の小さなチョコレートを差し出してくれる。
「うん…しかもその後輩、超かわいくてさ。あはは…」
詩葉が差し出した20円チョコを受け取る。
包装を破って中身をかじると、口の中に広がるチョコの甘い味が凝り固まった心をほどいてくれた。
「それって、萌々ちゃん?」
「もも?」
チョコの角をちびちびとかじりながら詩葉の方に向くと、「諏訪野萌々ちゃんだよ。サッカー部のマネージャーの1年生。」
詩葉はカップのカフェオレのストローをぐるぐると回しながら「有名だよ?ずっと笹岡君のことが好きって」とさらりと言った。
「へぇ…」
痛いくらいわかっていた事実に性懲りもなく傷ついてしまう。
「あの子、体育祭の実行委員の準備で一緒になったことあるんだけど、礼儀正しいしかわいいし。女のわたしも惚れるよ」
蒼太が告白されるシーンを目撃したせいで耐えきれなくなってその場を離れてしまった。
だから、蒼太が諏訪野さんにどう返事したかは知らない。
「やっぱOKしたのかな」
濃紺のプリーツスカートに私の涙が落ち、黒く変色していく。
「さあね。笹岡君は見た目で人を好きになるような人間じゃないと思ってるけどね」
詩葉はさらっとそう言い残すと、「お母さんから鬼電かかってるからばいばーい」と買い物袋を掴んで公園を出て行ってしまった。
「えー…」
置いてけぼりを食らって呆然としていた私に、誰かが声をかけた。



