私はその後ろ姿をじっと眺めながら、詩葉の言葉を思い出す。
『夏凜は嘘が下手だし鈍感だし、笹岡君が好きなんて一瞬でわかっちゃうよ』
「そんなわかりやすいのかね、私は…」
ナポリタンを箸でつまんでもちもちと噛んでいると、ピロティにサッカーボールが転がってきた。
箸をおいて、ベンチに弁当箱を置いてサッカーボールを持つと、「夏凜ー!」と蒼太がこちらに走ってきた。
「ありがとー。」
ボールを受け取って、蒼太がその場を去っていく。
蒼太より2、3歩遅れていた男子が彼の肩に手を回して何かを言った。
「あの子、蒼太の彼女?超かわいいじゃん」
「そんなんじゃないです。あくまで幼なじみです」
盗み聞きはよくないけど、嫌でもその男子と蒼太の会話が耳に入ってしまう。
「そんなこと言って、好きなんだろー?」
「だから、そんなんじゃないですって」
頑なに否定する蒼太の横顔を見ていると、ずきっと心が痛んだ。
――私にとっての蒼太が「あくまで幼なじみ」でしかないのと一緒で、蒼太にとっての私も「あくまで幼なじみ」でしかないんだ。



