ガラス窓の奥で、細い糸のように雨が降っている。
「夏凜、今日雨降ってるから傘持っていきなさいよ」
その様子を無意識に眺めていると、お母さんがバレッタで髪をまとめながらこちらを見てきた。
「うん」
ゆで卵にマヨネーズをつけてかじると、「今日は蒼太君も一緒?」とお母さんからとんでもないアクションが飛んできた。
「ふぁ、ふん。」
口の中をゆで卵でいっぱいにしながらそう返事すると、口の中でゆで卵の味がすっと消えていくような感覚がした。
「そう。」
自分から聞いてきたくせに、実にあっさりした反応だ。ふだんならちょっとイラっとするけど、今日ばかりはありがたかった。
「早くしないと遅刻するわよ。」
ふと我に返ると、私の手元にはかじりかけのシュガートーストと飲みかけのカフェオレ。
私はシュガートーストを大きくかじり、カフェオレで流し込んでテーブルから立ちあがった。



