至上最幸の恋

 エリサは自分自身の力で、いまの地位を手に入れた。素晴らしいことじゃないか。

 それなのに、どうしてこんな気持ちになるんだ。嫉妬なのか焦りなのか……いや、どれもしっくりこない。自分でも、うまく名前をつけられない感情だ。

「おい、瑛士。なにボーっとしてんだよ。早く入るぞ」

 慧に肩を叩かれて、我に返る。
 磯崎という男を目で追って、つい考え込んでしまった。その間に、慧が受付を済ませてくれたらしい。

 揺れすぎているな。じっとしていられない子どものように、常に気分が落ち着かない。

「やあ、浅尾君」

 チケットに記載された座席へ行くと、先に座っていた桂木さんが手を挙げた。そういえば、隣の席だと言っていたな。1階席の中ほどで、ステージがよく見える場所だ。

「妻の容子だよ」
「こんにちは、浅尾さん」

 桂木さんの隣にいる上品な女性が、柔らかな微笑みをたたえて会釈する。
 手短に挨拶を済ませ、通路側に座る桂木夫妻の前を恐縮しながら通り抜けて、オレと慧はその横に腰を下ろした。

「君も夫婦で来ると思っていたんだがね」
「あいにく、妻は外せない用があって」
「そうか、残念だね。そちらは、ご友人かな?」
「柳町慧です。上野で喫茶店を営んでいます。瑛士とは、高校時代からの友人で……」

 慧が自己紹介をしている間、オレは周囲を見回していた。