至上最幸の恋

 ピンクのガーベラを基調とした花束は、エリサのイメージにピッタリだ。公演チラシに載っていた彼女の写真を見せて、花束を注文したらしい。

「これは、瑛士と俺のふたりからってことにしとけよ」
「あぁ、悪いな。助かる」
「金は半分貰うからな」
「へいへい」
「きっちりワリカンするぞ。高かったんだから」

 金に余裕があるくせに、こういうところは相変わらずシビアだ。慧は他人に対して、貸しも借りも作ることを嫌う。オレは、慧のそういう性格が好きだった。
 
「瑛士。俺たちは、あっちの受付みたいだぞ」

 正面の入口から中へ入ると、一般客と関係者の受付が分かれていた。

 関係者受付では、明らかに業界人という出で立ちの男が花束を預けている。持つと完全に前が見えなくなるほど、大きなバラの花束だ。
 
「磯崎様ですね。確かに、お預かりいたしました」
「はい、よろしく」

 受付を済ませた男は、颯爽と奥の通路へ消えて行った。あの見た目なら、俳優かモデルだろうか。

「あれって、写真家の磯崎貴也だろ」
「磯崎?」
「まぁ、瑛士は知らないか。週刊誌の常連なんだよ、モデルとの熱愛でな。かなりの女たらしだって噂だぞ」

 写真家……そうか。エリサの、モデルとしての仕事相手だな。
 ああいう人間が周りにたくさんいるのだと思うと、なんとなく胸がざわついた。