至上最幸の恋

 相変わらず、胸を焦がすような愛情があるわけではない。それでも男と女であることには変わりないし、家族としての情はある。

 だからこそ肌と肌の触れ合いは心地よくて、落ち着く。愛があるかどうかなんて、正直どうでもいいことだと思った。

「ねぇ、日曜日って……」

 ベッドのまどろみの中で、隣に横たわる律が静かに口を開いた。

「どこであるの?」
「ん?」
「コンサート」
「あぁ。赤坂のサントリーホールだと」
「そう」

 どこか、含みのある言い方だった。

 律は本音をさらけ出すのが苦手で、肝心なところで言葉を濁す。もともとの性格なのかもしれないが、オレのせいで気持ちに蓋をしているのではないかと思ってしまう。

 意識が絵にばかり向いていて、律と向き合う時間が取れていない。そのことに対する罪悪感は、いつも胸の奥にあった。

「行く気にでもなったのか?」

 抱き寄せると、律はオレの胸に顔をうずめて、首を横に振った。
 
「ううん。どのくらいの規模なのかなって。大きいところでやるのね」
「注目の若手ピアニストらしいからな。オレも聴くのは初めてだけど」
「……その人の絵を、描いているのよね」
「そうだな」

 まさか、そのことが気になっているのか?

 エリサはあくまでも絵のモチーフで、特別な感情があるわけではない。そう説明はしたが、納得していないのだろうか。