至上最幸の恋

 そんな当たり前の感情さえ許してはもらえないのかしら。まるでアイドルのように、恋愛禁止を言い渡されるの?

 ……だけど、いくら不満に思ったとしても、いまの私は事務所の方針に従うしかないのよね。お仕事をさせていただいているのだし、仕方のないことだわ。

「大丈夫ですよ、黒瀬さん。いまはお仕事のことで頭がいっぱいなので、恋愛には気持ちが向きませんから」
「磯崎さんのほうは分からないじゃないですか。エリサさんを気に入っていたし」

 やっぱり心配性ね。磯崎さんはプロのカメラマンとして私を褒めてくださっただけなのに、深読みしすぎよ。
 
「それはあくまでも、被写体としてだと思います」
「まぁ一応、警戒は怠らないでくださいね。彼には女性関係の噂が多すぎるので」
「はい。肝に銘じておきます」
「あ、でも……もし真剣交際を考えているお相手が現れたのなら、僕も事務所を説得する方法を考えますから」

 顔を上げると、バックミラー越しに黒瀬さんが照れくさそうに目を逸らした。

「ふふふ、ありがとうございます」

 なんだかんだで、黒瀬さんはお優しいのね。そのお言葉だけ、ありがたく受け取っておこうかしら。

 だけどいまは、新しい恋なんて考えられない。瑛士さん以外の人を好きになることなんて、まったく想像できないの。

 この想いは、誰にも知られてはいけない。宝箱の中にしまいこんで、しっかり鍵をかけておかなくちゃ。「いい思い出」にできる、そのときまで……。