至上最幸の恋

「撮影、うまくいってよかったですね」

 帰りの車内で、黒瀬さんが嬉しそうに言った。このあとはピアノのレッスンがあるから、車は自宅ではなく練習スタジオがある代々木へ向かっている。

「ええ。最初は緊張したけれど、ほっとしました」
「僕も見入っちゃいました。エリサさんが本当に綺麗で……やっぱり、磯崎さんの腕もあるんでしょうね」
「そう思います。すぐに緊張が解けましたし、安心してお任せできるというか」
「だけど、本当に気をつけてくださいよ」

 ふと、黒瀬さんの声が低くなった。

「磯崎さんは業界でも目立つ存在だし、もしスキャンダルにでもなったら、エリサさんのイメージに傷がつきます」
「私のイメージ……ですか?」
「エリサさんは、ピュアで真っ白なイメージで売り出しているんです。だから恋愛や醜聞は御法度だって、高梨さんからも釘を刺されていて……」

 ピュアで真っ白……そうだったの。だから黒瀬さんは、私を「俗っぽい情報」に触れさせないように高梨さんから言われていたのね。

 事務所の方向性は理解できるし、そこに不満はない。だけど「恋愛=スキャンダル」という感覚は、少し納得いかないわ。

 私だって、感情のあるひとりの人間だもの。恋もするし、いつかどなたかと想いを通わせることだって、あるかもしれないのに。