至上最幸の恋

 当然のことだけれど、カメラマンとモデルの相性は、写真のクオリティに大きく影響する。コミュニケーションを重視するから自然と距離が近くなりがちで、恋愛に発展することも少なくないそう。

 だから黒瀬さんは心配なさっているのだと思うけれど、磯崎さんが噂通りの軽薄な人だとは、私には思えなかった。

「おっと、そろそろ行かなくちゃ。会議が始まっちゃう」

 腕時計を確認して、風間さんが慌てたように声を上げた。

「うふふ。相変わらず、お忙しいですね」
「そうなんだよ~。40を過ぎると、なかなか疲れが取れないから辛くてねぇ。だけど美味しいクッキーをいただいたから、もうちょっと頑張れるな」

 私が差し入れしたクッキーの包みを軽く掲げて、風間さんが微笑む。40代には見えない、まるで少年のような表情だわ。

「こんなものでよければ、いつでもお作りしますわ」
「本当に? じゃあ、またお仕事を頼まないとね」
「はい! ぜひ、お願いいたします!」

 よかった。今回の撮影は、風間さんにもご満足いただけたみたい。社交辞令かもしれないけれど、きっと次につながるはずだわ。

 着実に実績を積んでいかなくちゃ。私にしかできない表現を磨いて、モデルだけじゃなく、ピアニストとしても成長していきたい。きっとそれが、道を示してくださった瑛士さんへの恩返しにもなるはずだもの。