至上最幸の恋

「ご用命があれば、事務所にご連絡ください」

 背中を向けているので、黒瀬さんの表情は分からない。でもなんだか少し、怒っている?

「もちろん。ぜひまた一緒に仕事がしたいので、近いうちに連絡させていただきます」

 黒瀬さんが差し出した名刺を受け取って、磯崎さんは笑顔のまま頷いた。

「必ず、事務所を通していただきますよう」
「ははは、分かっていますよ。しっかりしたマネージャーさんだなぁ」

 なんとなく、空気がピリピリしている。黒瀬さんは、磯崎さんを警戒しているのかしら。撮影中は、スタジオの隅で静かに見守ってくださっていたけれど……。
 
「……気をつけたほうがいいですよ」

 磯崎さんが離れると、黒瀬さんは低い声で呟くように言った。

「あの人は、モデルを食いまくっているって噂で……」
「食い……?」
「つまり、口説きまくるってことです。あの甘いマスクに甘い声、そりゃモテますよね」

 あ、そういうことね。確かに磯崎さんは素敵な男性だもの。そういう噂が立つのも無理ないわ。

 だけど、私を口説くなんてことはないと思う。もっと魅力的なモデルさんたちと、たくさんお仕事をされているだろうし。

「とにかく、個人的にやり取りするのはダメですよ。絶対に」

 黒瀬さんは心配性なのね。ここはひとまず、素直に頷いておきましょう。