至上最幸の恋

 そもそもこんな子どもの相手に、なぜスケジュールを考えなければならないんだ。自分の気持ちの向くまま旅をしたいと思っていたのに。振り回されるのは御免だ。

「……もしかして、甘いものはお嫌いですか?」
 
 黙りこくってしまったオレに、エリサが不安げな表情を向けてくる。
 やはりダメだ。この瞳を見ると、どうしても嘘がつけなくなる。あまりに無垢で透明で、吸い込まれそうだ。

「別に、嫌いじゃねぇけど……」
「シナモンは大丈夫ですか?」
「ああ」
「チョコレートは?」
「食べられる」
「お紅茶は?」
「好きだな」

 すると、今度はパッと明るい表情になった。本当にコロコロとよく変わる。見ていて飽きないな。

「同じですわ!」

 それは、自分も紅茶が好きという意味か。この独特な空気にも少し慣れてきた……いや、慣れてどうする。結婚も交際も、無理なんだぞ。

 ただ、ふざけているようには見えないし、嘘をついている瞳でもない。そう考えると、邪険にするのもかわいそうだ。相手は子どもだし、たとえ本当にひと目惚れだったとしても、それは一時的なものだろう。

 いずれにしても、ここであれこれと考えても仕方がない。これも旅の醍醐味だと思って、とりあえず、彼女の気が済むまで付き合ってやることにした。