「それと、あとは……身長175cm、体重52kg、股下88cm、視力は両目2.0」

 えらく脚が長いな。股下比率50%超えとは、モデル並みだ。いやいや、そんなことはどうでもいい。一体どこまで個人情報を晒すつもりなんだ。ペラペラと、よく喋る女だな。

「あと、スリーサイズは」
「待った待った待った。自己紹介は、もういいから」
「そうですか? それでは、貴方のお名前を教えてくださる?」
「……浅尾瑛士(えいし)

 さすがにここまで言わせておいて、自分が名乗らないわけにはいかないだろう。それに名前を教えること自体は、別に嫌ではない。

「あさお、えいしさん……素敵なお名前ですね。どのような字を書くのですか?」
「浅瀬の浅に尾っぽの尾。瑛士は王へんに英語の英と、武士の士」
「まぁ! 瑛士さんは、武士なのですね!」
「武士じゃねぇよ」
 
 やはり独特だな。そもそもいきなり名前で呼ぶなんて、距離を詰めるのが早すぎないか?
 しかしその笑顔にはなんの屈託もなく、陳腐な表現だが、まるで花が咲いたようだと思った。

 まずいな。こういう表情を見せる女は厄介だ。まったく悪気もなく、他人の懐に飛び込んでくる。そしていつの間にか、心を占拠するんだ。

 自分がこのタイプの女に弱いことは自覚している。深く関わるのは避けたほうがいいだろう。