至上最幸の恋

 オレにも生きた証が遺せるなんて、こんなに幸せなことはない。

 人生は長さではなく、密度だと思う。
 もちろん愛する家族と長く過ごしたいという気持ちはあるが、納得のいく絵が描けたなら、それで満足だ。

 見たもの、感じたものを描き残して、エリサや子どもたちに伝えたい。いつしか、それが絵を描く動機になっていた。

 やがてメディアの取材が増え、大きな賞を何度も受賞し、園遊会に招かれるほどになっても、その想いは変わらなかった。

「瑛士さん。納得のいく絵は描けましたか?」

 ある日の午後、アトリエにしている部屋を出ると、長男の桔平を抱いたエリサが声をかけてきた。
 桔平はまだ喃語(なんご)が出はじめたばかりだが、顔はオレにそっくりだとよく言われる。

「いや……まだまだ、だな。とりあえず、エリサのクッキーが食べたくなった」
「ふふ、準備しますわ。桔平を見ていてくださる?」

 エリサから桔平を受け取ると、腕にずしりと重みを感じた。着実に成長しているな。

 庭では、長女のさくらと次女の楓が、縄跳びの回数を競っている。ふたりともよく喋り、よく笑う子だ。

 庭から聞こえてくる明るい声を聞きながら、桔平をあやす。すると桔平は、無垢な瞳でオレの顔をじっと見つめてきた。

 この子はどうやら、さくらや楓より発達が早いらしい。生後3か月で寝返りができるようになったし、やたらと周りを注意深く観察している。